東京大学 川原 准教授が描く10年後に芽吹く「イノベーションの種」

東大発イノベーションエコシステム(1)東京大学大学院情報理工学系研究科 川原圭博准教 後編

 都市のイノベーションのあり方を研究・実践するRe:public(リ・パブリック)の田村大さんと内田友紀さんに、様々な組織でイノベーションを生み出している人たちインタビューしてもらい、イノベーションのエコシステムを探るシリーズ。後編は、大学の研究室が取るべきイノベーション戦略の本質に迫る。

[公開日]

[語り手] 川原 圭博 [聞] 田村 大 内田 友紀 [取材・構成] 石川 伸明 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] スタートアップ スマートデバイス IoT ベンチャー 教育 社会・公共 東大発ベンチャー

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影響力を持つ研究にある、シンプルな「コンセプト」と「メッセージ」

田村(株式会社リ・パブリック 共同代表):
 大学の教員・研究者は先端技術を先端のまま世の中に出そうとする傾向がありますが、川原さんは先端的な技術を誰にでもわかるようなものに翻訳して世の中に出している感じがします。川原さんの研究はコンセプトが新しいのに、わかりやすい。例えば、東大発の有名ベンチャーでは人型ロボットの開発・製造を行うSCHAFT(シャフト)がありますが、技術は新しいけれどコンセプトは従来からあるものです。ですが、AgIC(エイジック)やSenSprout(センスプラウト)は、「あっ、その手があったか!」みたいな感じがするんですね。僕が川原さんの研究で最初にそう思ったのは、「紙に銀インクで印刷して、センサーにしてばらまけば、使い捨ても可能になる」という説明です。コンセプトがわかりやすいということは、メディアも取り上げやすいということですよね。

内田(株式会社リ・パブリック 共同代表):
 私もそこは気になっていて、複雑な概念を私たちが触れられるものにしたり、社会に役立つものにうまく繋げていたりする、その発想の元にあるものは何か知りたいですね。

川原(東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授):
 まだ、事業として成功しているわけではないので、そのへんは何とも言えないですが、自分が使いたいものをずっと作り続けてきたというのはありますね。コロンブスの卵的発想が僕は好きなんです。学生にも、「一言で言い表せる研究をしなさい」とよく言います。大学院生の頃、先輩の研究の話を聞いても理解できないことがしばしばありました。「難しくて僕には理解できないんだ」と最初は思っていたのですが、ある時、一言で言えない研究というのは、まだその本質を整理しきれていないのだと気づいたんですね。

内田:
 本当に社会にインパクトを与えるのは、実はすごくシンプルなメッセージで誰にでもわかることですよね。逆に言うと、世の中を変えるシンプルさに辿り着いた技術は、たくさんの人が関心を示し、協力者が現れ、輪が広がっていくということなんですね。

川原圭博川原圭博 東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授
2011-2013年ジョージア工科大学客員研究員およびMIT Media Lab客員教員を兼任.2014年 AgIC株式会社技術アドバイザー.2014年 JST さきがけ研究員 2015年 株式会社SenSprout 技術アドバイザー 同年 JST ERATO研究総括

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