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「いつもマイノリティだった」IBMの人工知能「Watson」エンジニア 村上明子さん

Developers Summit 2016(デブサミ2016)村上明子氏セミナーレポート

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災害後、行動の起こし方がわからなかった。

 3.11の震災の時、多くの人が経験したように帰宅難民となり11キロの帰路を歩いて帰った。その時に感じた日本の状況、それに続く不幸な原子力発電所の事故も、かつて放射能を使った研究者だった彼女には大きな衝撃だった。

 何か行動を起こしたい。しかし起こし方が全くわからない。研究者として出来ることとして、災害を減らすための避難経路のシミュレーション、専門の自然言語処理を活かした災害時のソーシャルメディア分析などを研究機関や学会に提案していった。すぐに行動が出来なかったことに、引け目を感じている中、ITエンジニアのコミュニティ活動が活発になっていった。 2013年、「IT☓災害会議」の主催メンバーである及川卓也氏から、村上さんの姉の村上圭子さんをプロジェクトに招待したいので、紹介してくれないかと声がかかる。圭子さんは、以前より放送局の報道局で災害報道を行っており、ボランディアでコミュニティFMの立ち上げにも関わっていたからだ。もちろん姉は紹介するけれど、自分も参加したいと頼んだところ、及川氏にあっさりと断られたという。

「すいません、きみはボランティアやってないから呼べません」と。断られてしまったんですね。やっぱり引け目を感じていて、かなりその及川さんに言われた言葉がショックでした。

 村上さんの申し出をあっさりと却下した及川氏だが、及川氏には考えがあった。その後、石巻でおこなわれた「レース・フォー・レジリエンス」という災害レジリエンスのためのハッカソンに村上さんを呼んだ。 東京の活動ではなく、「被災地のことをちゃんと見るなら石巻に行くといいよ」というのが及川氏の薦めだった。

Race for Resilience 石巻ハッカソン

石巻は「多様性をつくる場所」

2014年女川・石巻視察

 石巻もまた村上さんにとって、多様性を作る場所だという。震災と津波で甚大な被害を受け多くの人々が亡くなった石巻。震災の前から人口は流出していた。災害からの復興を機に、もう一度子どもたちに夢を与え、人々の職を生み出そうという夢が、石巻にはある。震災復興10年後の、2021年までに、石巻から、1000人のIT技術者を作ろうという活動をおこなうイトナブ石巻という団体に共感した。

 防災ボランティアの活動の中では、様々なコミュニティが生まれる。時には摩擦や軋轢も生じることもある。それまでボランティアの経験がなかった村上さんにとって、それまでのチームの常識ややり方にとまどうこともあったという。

 ITの技術者にとって何ができるか。そういう問題意識のもと、女川を視察するなどの活動をおこなっていたメンバーと一緒に「情報支援レスキュー隊」という組織を2015年に法人として立ち上げた。災害の現地にいったり、後方支援をおこなう情報のプロとしての「プロボノ」集団である。

 情報支援レスキュー隊は、去年(2015年)の常総市の水害の際にも現地入りをして、自治体と連携し活動した。現地に行くだけではなく、それを後方支援していくというのも大事なミッションの1つだという。

情報支援レスキュー隊(IT DART)

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研究者の書くコードなんて使えない!?

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