CVCファンドのメリット、デメリット―「事業シナジー創出」を実現する“5つの視点”

第7回:M&Aインサイト

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[著] 青木 義則 [提供元] M&A Online編集部 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 企業戦略 M&A コーポレート・ベンチャー・ファンド

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2.しっかりとした体制で臨めているか

 ベンチャー投資を行う社内体制と聞くと、投資業務経験者による少数精鋭の組織をイメージされるかもしれない。単純に投資するだけであれば、それでも良いかもしれない。例えば、投資後のベンチャー企業への関与は最低限に留めておき、投資した会社の中から順調に成長する会社を見極めていき、期待通りに成長した会社を最終的に買収して子会社化し、それをもって「新規事業開発」とするアプローチであれば、少数精鋭のチームでも問題ない。

 一方、投資後はベンチャー企業との事業シナジーを追求するアプローチを目指すのであれば、社内の体制をもっと充実させる必要がある。当たり前の話であるが、投資すれば事業シナジーが生まれるわけではなく、ベンチャー企業の経営者と協業の構想・計画策定から実行まで一緒になって推進するには、1案件について専任の担当者が必要となるであろう。協業が軌道に乗ってくれば、更に人数を増やし、最終的には投資部門から独立した組織に発展することを想定しながらリソースを投入する必要があるのである。

 また、もう一つ重要な視点として、ベンチャー企業との協業推進担当者をバックアップする体制も必要である。協業推進者は、事業シナジー創出におけるプロジェクト・マネージャーであり、ベンチャー経営者との窓口になるだけでなく、協業を推進するために、必要に応じて社内の関連事業部門への働きかけを行う。具体的には、ベンチャー経営者と共に具体的な協業内容のアイディアを議論し、協業案としてまとめる。次に、その協業案の実現のために、関連する事業部門にその案を説明しに行き、その気になってもらい、協業を実行するための担当者をアサインしてもらうのである(要するに事業部門への売り込みである)。その後は、ベンチャー経営者と事業部の担当者の双方の具体的なアクションを決め、プロジェクトを推進していく。

 しかし、図表4に示すように、ベンチャー経営者、協業推進担当者、事業部門担当者、大企業経営陣にはそれぞれの思惑があるため、協業推進担当者はベンチャー経営者とのコミュニケーションに加え、社内の調整に大きな労力を割く必要が出てくる。筆者の経験では、社内調整の方に圧倒的に時間と手間を使うことになることがほとんどである。その際に、役員クラスなどの経営陣によるバックアップなどが無いと、事業部門からの協力を得ていくのは容易でなく、協業推進担当者が途中で挫け、心が折れてしまうことにもなりかねない。そのうち、ベンチャー経営者にも「話が違う」「出資を受けていろいろ口出しされるけど、全然協力してくれない」という思いが生まれてくるリスクがあり、結果としてベンチャー経営者の協力を得るのが困難な状況に陥りかねない。

 このような事態に陥ることを避け、事業シナジー追及を加速させていきたいのであれば、経営陣によるバックアップ体制も含め、関連する事業部門も巻き込んだしっかりとした体制を構築して取り組む必要がある。投資は進んでいるものの、事業シナジー創出に上手く繋がっていないとお悩みの大企業の方は、先ずは体制面で課題が無いかを検討いただくことをお勧めしたい。

事業シナジー追及時に留意すべき各自の思惑図表4:事業シナジー追及時に留意すべき各自の思惑

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