AIに仕事を奪われない、人間の社会的能力を活かす「ネットワーク・インテリジェンス」

『ソーシャル物理学』著者、MIT Alex “Sandy” Pentland教授が語ったこと

 2016年7月5日と6日、「ブロックチェーン」と「人工知能」をテーマに「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2016 TOKYO」が開催された。MITメディアラボのAlex “Sandy” Pentland教授による「人工知能とどう向き合うか」と題した基調講演の内容をレポートする。

[公開日]

[講演者] Alex “Sandy” Pentland [取材・構成] やつづかえり [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] スマートシティ AI・機械学習 ロボット ワークスタイル ネットワークインテリジェンス

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AIに奪われない仕事は“ネットワーキング型”の仕事

 Alex “Sandy” Pentland(アレックス”サンディー”ペントランド)教授は、フォーブス誌が選ぶ「世界で最も有力な7人のデータサイエンティスト」にも選ばれた著名な科学者であり、AT&T、Google、日産等のアドバイザーを勤めるなど、ビジネス界にも影響のある人物である。

 この日ペントランド教授がテーマに掲げたのは「ネットワーク・インテリジェンス(Networked Intelligence)」。これは教授のオリジナルな概念で、人間の社会的ネットワークを用いた意思決定能力のことを指す。

 ペントランド教授によれば、昨今の「AIが人間の仕事を奪ってしまう」という言説は大げさで、過度に人々の恐怖を煽っているという。なぜなら人間ができることに比べて、AIの能力は限られているからだ。

 現在のAIと機械学習は、ものごとの相関関係、現象の単純化、熟練者の特定能力の模倣がベースになっている。そのため、学習のための大量データが利用可能で、変化が少なく安定した状況の下でしかパフォーマンスを発揮できない。結果として、前提条件が頻繁に変わったり、まれに大きな例外が発生したりする金融市場のようなものは、AIの苦手とするところだ。だから、いまだにAIよりも人が運用するヘッジファンドの方が優位なのである。

 時代によって雇用状況がどう変化してきたかをみても、職場にコンピューターが導入された80年代以降、同じ作業の繰り返しを主とした仕事は減少しているものの、ホワイトカラーでもブルーカラーでも非ルーティン業務は増加している。ルーティンでない仕事とはどういうものか、それをペンドランド教授は「ネットワーキング型の仕事」と呼び、それこそが人間が得意でAIにはできないことだと語る。

IT化が進み、初期段階のAIもすでに長期間使われているにも関わらず、非ルーティン業務の雇用が増えているのはなぜか? それは、非ルーティン業務が「人をつなぐ仕事」だからです。起業家的な精神で「この人のニーズとこの人の能力を引き合わせればうまくいくな」と考えるような、クリエイティブな仕事は、逆に増えているのです。

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