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「アルピニズム」を山岳観光ビジネスにしたスイスのユングフラウ鉄道

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 スイスアルプスのユングフラウ中腹にはトンネル内を走る高山鉄道駅終点、ユングフラウヨッホ駅がある。標高3454メートル、富士山なら9合目にあたる。山の内部にある終点駅にはショップやアイスパレスなど広大な施設があり、屋外には氷河上にスノーパークがある。開業時の歴史と高地の観光地を支える技術に目を向けてみる。

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日本人を魅了したアルピニズム

 明治初期、明治政府が欧米諸国を視察するために岩倉使節団を派遣した。使節団は1873年(明治6年)6月にスイスのチューリッヒに到着。リギ登山鉄道山頂駅の開通式典への参列、スイス相撲の見学、ジュネーブのサン・ピエール大聖堂訪問などを歴訪していたところ、日本政府から緊急帰国の命をうける。その後にジュネーブやローザンヌを経由してフランスのマルセイユから日本に向けて出航したという記録がある。

 上記旅程の途中に登山鉄道山頂駅の開通式典があったように、スイスでは山岳観光が早くから栄えている。19世紀末にアルピニズムがブームとなり、アルプス山麓に向かう鉄道やロープウェイなどの山岳交通が発展したため。スイスの主要な山岳交通の多くが約100年前に建設されているほど。

 ヨーロッパのアルピニズムは早い段階で日本にも流入した。例として日本人のスイスアルプス登頂の歴史を見ると、1910年にニッカウヰスキー(現アサヒビール)設立時の出資者の1人である加賀正太郎がユングフラウ(標高4158m)に日本人で初登頂、1926年には秩父宮雍仁親王がヴェッターホルン、ユングフラウヨッホからアレッチ氷河横断、フィンスターアールホルンなど数々の高峰を登攀(とうはん)してヨーロッパ山岳界から偉業とたたえられたこともある。

デパートやテーマパーク、スイス山岳観光はここまで来ている

 スイスの登山鉄道の最高峰と言えるのがユングフラウ鉄道だ。クライネ・シャイデック駅からユングフラウヨッホ駅まで、標高差約1400mを1時間弱で一気に駆け登る。

 終点のユングフラウヨッホ駅は「ユングフラウの肩」という意味で、山頂から少し低く比較的平坦な場所にある。周囲にはユネスコ世界遺産でもあるアレッチ氷河が広がっている。標高3454mなので富士山なら9合目に相当する。かなり高い。

 ユングフラウヨッホ駅はデパートやテーマパークを併せ持つ観光地であるだけではく、アルプス高地研究所(気象観測所)も併設されている。屋外にはアレッチ氷河上にスノーパーク、足を伸ばすと登山者用の山小屋もある。

館内図 PDFダウンロードリンク

 館内はまるでデパートである。スイス名産の時計やチョコレートなどの土産物店ほか、5つのレストランが毎日3000〜3500食を提供している。高地の施設とは思えないほど本格的な料理が出てくる。

施設には土産物店やレストランが並ぶ

 さらに館内にはスイスアルプスや鉄道工事の歴史を振り返る展示「アルパイン・センセーション」、氷河の内部に掘られた「アイスパレス」、周囲が見渡せるスフィンクス展望台などの観光アトラクションもある。余談だが、アイスパレス内にある氷像を彫るために、職人が日本の彫刻刀を使っているという。また氷河は年間20cmほど動くため、アイスパレスの天井は毎年調整しているそうだ。

氷河内に掘られた洞窟「アイスパレス」

 建物を出るとそこには白銀の世界が広がっている。ヨーロッパ最大となるアレッチ氷河の上にはそり遊びなどができるスノーパークが用意されている。くどいようだが、ここは富士山9合目に相当するほどの高地である。にもかかわらず、シニアや子連れでも鉄道に乗れば来ることができてしまうのだ。スイスの山岳観光はここまで発展しているのかと驚かされる。

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

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