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「人工知能の経済学」視点で考える第4次産業革命――雇用なき経済成長と認知アーキテクチャ

Business Book Acadey 2016.08.24 セミナーレポート

 ビズジンが主催する無料イベント「Business Book Academy」(協賛:日立製作所)。8月は、「AI・シンギュラリティ時代の成長戦略」をテーマに開催。講師は、Biz/Zine連載「人工知能社会論からの考察」が好評で、人工知能社会論研究会の共同発起人である、駒沢大学講師の井上智洋氏と、AI研究者である理化学研究所の高橋恒一氏。井上氏からは「人工知能の経済学-雇用なき爆発的な経済成長-」として、人工知能が未来の経済をどのように変えるのかについて。高橋氏からは、「シンギュラリティは本当に来るのか? -日本の取りうる道-」として、特化型人工知能から汎用型人工知能への潮流の変化や、その鍵となる「認知アーキテクチャ」と日本企業の取りうる選択肢としての「オープンプラットフォーム戦略」を解説。その講演内容をレポートします。

[公開日]

[編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] AI・機械学習 テクノロジー

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2030年に誕生する汎用人工知能とは一体何か。開発の鍵を握るのは「全脳アーキテクチャ」

 人間の脳と同じように様々な知的振る舞いをこなすことのできる「汎用人工知能」が2030年頃には完成すると言われている。仮に実現すれば、第4次産業革命が起き、私たちの生活は一変する。革命の鍵となる汎用人工知能とは一体何か。汎用人工知能出現により私たちの現在の生活はどのように変化していくのか。

 巷を騒がせている人工知能の多くは「特化型人工知能」に分類される。この人工知能は、一つのタスクしかこなせないのが特徴だ。たとえば、Googleのような検索エンジンやSiriなどの音声認識が当てはまる。インプットしたある特定の分野には高い能力を発揮するが、人間の脳のように自律的に考え判断し、行動する、というようなアウトプットはできない。一方、汎用人工知能は自律的に物事を考え判断するという特徴を もっており、人間のような振る舞いも可能だ。

 汎用人工知能を完成させるためには、人間の脳をモデルとした機械学習器をつくる必要がある。汎用人工知能は2つの方式のいずれかによって実現されると言われている。1つは、「全脳エミュレーション方式」というもの。これは、1000億のニューロンと100兆のシナプスから成る脳の神経系のネットワーク構造をすべてデータ化してコンピュータ上にソフトウェアとしてすべて再現するという方式だ。2つ目に、「全脳アーキテクチャ」と呼ばれる、脳の構造を模倣した「人工脳」を作ることで実現される方式がある。後者の全脳アーキテクチャは、おおよそ2030年には完成されると言われており、もし実現できれば一人の人間の知性を凌駕する汎用人工知能が生まれるとされている。

第4次産業革命による経済構造の大きな変化

 人工知能による影響を経済学の観点から研究する井上智洋氏は、全脳アーキテクチャによる汎用人工知能が誕生するとされている、2030年を「第4次産業革命」の始まりと語り、そこで起きる経済構造へのインパクトについて語る。

井上智洋氏(駒沢大学講師)井上智洋氏(駒沢大学講師)

 第4次産業革命はビッグデータ、IoT、そして人工知能によってもたらされる次の産業革命だ。産業革命の歴史をたどると、1770年には、蒸気機関による第1次産業革命が起き、1865年には内燃機関や電気モータによる第2次産業革命が起きた。そして、1995年にはパソコンやインターネットが引き金となった情報革命である第3次産業革命が起きた。

 井上氏は、これら産業革命の歴史を俯瞰して「第1次産業革命は、定住革命以来の大きな経済構造の変化をもたらした。第4次産業革命はこの第1次産業革命に匹敵するほどの大きな変化になる」と語る。

 第4次産業革命が起きると、経済構造に大きな変化が訪れる。これまでの資本主義経済を形成していた「機械化経済」が、人工知能やロボットが生産活動に必要なインプットを主導する「純粋機械化経済」へと変わっていくためだ。

純粋機械化経済の構造

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