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ブロックチェーンの可能性と課題

ブロックチェーンは「分散型社会」をもたらすのかを、組織経済学の視点で考察する

ブロックチェーンの可能性と課題:第9回

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改めて、ブロックチェーンの分散性を考える

 ブロックチェーンの定義には様々なものがあり、その多くはブロックチェーンの仕組みを要件的に説明したものだ。一方、利用者側から見て、ブロックチェーンが実現しているものを端的に表現するとすれば、以下のようになるだろう(図1参照)。

ブロックチェーンとは、インターネット技術の上に構築される価値交換の分散型のインフラ技術である。

ブロックチェーンの位置づけ図1.ブロックチェーンの位置づけ

 ここには2つのポイントがある。1つは「価値交換」という点であるが、価値を交換するためには主体と主体の関係(誰から誰に価値が交換されるのか)、そして主体と価値の関係(誰が持っている、どのような価値なのか)を定義する必要がある。ブロックチェーンは、こうした2つの関係性を定義することで、価値の交換を可能にする。

 もう1つのポイントは、「分散型のインフラ技術」という点である。上記の価値交換の仕組みを特定の事業者(例えば銀行や取引所)ではなく、不特定多数により運営されるインフラ技術として実現されるということである。インターネットが、世界中の様々な主体の連携により、世界規模での情報交換を可能にしたのと同じように、ブロックチェーン技術は不特定多数の運営者の連携により、世界規模での価値の交換を可能にするものである。

 この時に、不特定多数の参加者により価値交換を実現するための技術的なブレークスルーが、プルーフ・オブ・ワークに代表される各種のコンセンサス・アルゴリズムであった。コンセンサス・アルゴリズムは台帳の状態を更新し、特定のバージョンを最新かつ正統なものとして、対等な関係のコンピュータ間で共有することを可能にする。言ってみれば、「台帳更新」という業務を分散型の組織で行っているのである。

 また、ブロックチェーン上で動作するコード、すなわち「スマート・コントラクト」は、さらに高次の分散性を提示している(図2)。もしブロックチェーンが単なる「分散化されたデータベース(DB)」であり、そのDBに対する処理は外部の特定のアプリケーションが行うのであれば、システム全体としてみれば分散システムとは言えないだろう。従来通り、特定の主体がデザインし、コントロールする中央管理的なシステムである。一方、スマート・コントラクトは、コードをブロックチェーンに埋め込むことにより、外部の中央管理者から独立性を高めた処理を行うことができる。スマート・コントラクトに書かれた処理は、もはやそれを書いた人から独立し、ブロックチェーンという世界で共有の処理規約として存在し、実行されることになる。分散化でもあり、究極の自動化とも言える(図2)。

 ただし、特定の中央管理者がいないという意味での「分散性」を確保するには、スマート・コントラクトはオープンソースであることが重要になる。ソースコードがクローズでは、特定の人しか処理内容を把握できず、改変もできないことになる。Siraj Ravalが著書『Decentralized Applications』(O’Reilly)にて分散型アプリケーションの要件の第一に「オープンソース」を挙げているのはこうした意味であろう。

スマート・コントラクトの意味合い図2.スマート・コントラクトの意味合い

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この記事の著者

高木 聡一郎(タカギ ソウイチロウ)

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