ICOが可能とするベンチャー投資の民主化とは?

ブロックチェーンの可能性と課題:第11回

 前回は、ブロックチェーン技術を活用した新しいサービス「ICO(Initial Coin Offering)」とは何かを紹介した。ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、新しくデジタル通貨(トークン)を発行することで、資金を調達する方法である。今回は、そのICOによるベンチャー投資のメリットと課題を冷静に考察してみたい。

[公開日]

[著] 高木 聡一郎

[タグ] IoT 事業開発 ブロックチェーン IPO スマートコントラクト ICO Initial Coin Offering ベンチャー投資

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ICOのベンチャー投資における3つのメリット

 VCを中心とするイノベーション・エコシステムと比較して、ICOにはどのような違いがあるだろうか。まずメリットから見ていこう。

1:ベンチャー投資の民主化

 これまで、公開前のベンチャー企業への投資は、その情報を知っている限られた投資家のみに開かれていた。資金を持ち、投資家として実績を持つ人のところに相談が持ちかけられ、投資が判断される。しかし、ICOはあらゆる人に開かれている。公開前の企業であっても、そうした企業の将来性に投資をしたり、支援をしたりすることが、誰でも簡単にできるようになったという側面がある。トークンを株式と見立てれば、まさに企業設立に立ち会って資金を拠出することが、誰にでもできるようになったと見ることができるだろう。

2:場所を選ばないスピーディな資金調達

 従来の投資方法であれば、有力な投資家を発見し、交渉し、投資を引き出さなければならない。そのための交渉には一定の時間と労力がかかる。また、シリコンバレーなど、投資家が多く集まる場所で起業したり、そのような場所を訪問したりするなど、地理的な制約も生まれてくる。ICOの場合は、インターネットにさえつながれば、どこでも資金調達を行うことができる。特に、投資が現地通貨ではなく、ビットコイン(BTC)やイーサ(ETH)などのグローバルなデジタル通貨で行われる場合は、さらに地域の制約は低くなる。例えば、先に紹介したChronoBankはオーストラリアのシドニーに拠点があり*1、ICONOMIはスロベニアにある*2。シドニーやスロベニアは、従来のスタートアップ起業の集積地とは言えないが、ICOによってグローバルな資金調達が可能となっている。

3:コインの価値と流動性の確保

 ブロックチェーンを活用した新サービスは、クラウドソーシング、保険、投資ファンドなど様々なものがあるが、いずれの場合でも、何らかのコイン(トークン)がサービスの媒介として用いられる場合が多い。これらのサービスはデジタル通貨を世の中に提供することを主目的とするものではないが、結果的にそのコインが安定的に流通できることがサービスの大前提となっている。ICOなしに、例えばマイニングなどの活動のみでコインを発行していった場合、サービスの初期段階でコインの流動性が低くなり、サービスが普及・発展する際の障害となる可能性がある。最初に一定量のコインを市場に供給しておけば、サービスを本格的に開始した際に円滑な普及を促進することが期待できる。

  • *1 http://bitcoinprbuzz.com/chronobank-cryptocurrency-based-recruitment-website-december-ico/
  • *2 http://www.forbes.com/sites/rogeraitken/2016/09/27/iconomi-uberizing-blockchain-platform-eclipses-6m-in-fintech-crowdsale/#1895d6db638e

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