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「IoT×エッジヘビーコンピューティング」ソラコムとPreferred Networksがタッグを組む理由

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玉川憲氏率いるソラコムは、一昨年の設立以来、猛スピードで業容とサービスを拡大しており、今や日本のIoTベンチャーの草分け的存在だ。一方で、Preferred Networksは機械学習・深層学習分野を牽引する企業。この2社がタッグを組みドイツ・ハノーバーで開催されるCeBIT 2017で共同デモを行う。日本を代表するテックベンチャーのジョイントで、何が発表されるのか?

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IoTの「カンブリア爆発」が始まる

数百億のモノがつながるIoT社会。モノとモノをインターネットを介してつなぐという説明が一般的だ。しかしインターネットの場合、有線LANは場所の制約があり、無線LANはセキュリティの確保が難しい。ソラコムは、ここにモバイル通信のSIMを持ち込むことで、一気にブレークスルーを図った。なぜインフラを持たないスタートアップ企業が、常時大量のデバイスを接続するサービスを実現できたのか?

玉川氏の前職はAmazon Web Serviceのエバンジェリスト。「AWSの顔」としてクラウドサービスを熟知していることがその理由だ。ソラコムのサービス「SORACOM Air」はSIMカードをモノに差し込み、通信基地局(NTTドコモ)からクラウド(AWS)にデータを集めるという仕組み。
この通信インフラを借りる「MVNO」と、AWSという「パブリッククラウド」の結合が、ソラコムの起こしたイノベーションだといえる。

「いきなりインターネットに出すのではなく、通信(セルラー波)でクラウドにデータを集める」ことがパラダイムシフトだと玉川社長は言う。それによって、企業向けのIoTのプライベートネットワークが安価になり、それまでのエンタープライズ系のM2Mサービスや専用接続のビジネスモデルを破壊した。

IoT事業者は、Amazonで購入できるSIMカードで1日10円の通信サービスが利用でき、そのSIMを組み込んだ製品を販売したりサービス事業をおこなうことが出来る。AWSが登場して以降、クラウドを利用したテックベンチャーが数多く生まれたように、ソラコムはIoTビジネスの「カンブリア爆発」を引き起こす可能性がある。

つながるモノはデバイスだけではなく、自販機や建設機械、交通機関など多岐に広がる。路線バスの運行情報に活用する十勝バス、太陽光発電の遠隔監視システムに利用するインフォミクス、車内広告配信に使うJapan Taxi、建設機械で施工現場の支援を行なうコマツ、乳児の生体情報をリアルタイムで監視し保育園での自己を防ぐパラマウントベッドなど採用企業は6000社に達する。他にも倉庫監視、高齢者や幼児の見守り、指紋認証、魚の養殖、球場でのビールの売り子の決済など応用は拡大している。モノを介するサービスのアイデアがあれば、事業化が即座に可能になる。

また、2016年の12月に米国、2017年2月にヨーロッパでサービスが開始され、グローバル用のSIMを用いることで、欧米の通信インフラ用の環境を調達する必要なく、日本のIoT企業が海外展開することが可能になった。

エッジヘビーコンピューティングを提唱するPreferred Networks

Preferred Networks(PFN)は、人工知能の主要技術であるディープラーニング(深層学習)にフォーカスし、製造業、バイオ・ヘルスケア、自動運転の分野で研究開発を行う企業で、エッジヘビーコンピューティングというコンセプトを掲げている。

エッジヘビーコンピューティングとは、IoTでセンサーデータが増える時代のコンピューティングアーキテクチャー。デバイスが生み出す大量のデータの価値密度(1ビットあたりの単価価値)は高くなく、すべてのセンサーデータをクラウドに送るとネットワークが混雑し、レイテンシ(遅延)が発生する。この問題を解決するために、データをすべてクラウドに送るのではなく、エッジ(データを収集する地点)で処理するという考え方をとるのがエッジヘビーコンピューティングだ。デバイスはネットワーク・エッジでデータを深層学習で解析し、学習済の解析結果だけをクラウドに送信する。クラウド側では、個別の解析結果をマージして、より汎用の精度の高いモデルを学習し、デバイスに再配布する。

「エッジヘビーコンピューティングによってデータの送信量は減るので、コストは低下する。毎回、ネットワークにつながらないのでレイテンシが下がる。ヘルスケアのようなプライバシーデータを直接クラウドに送るのではなく、デバイス側で解析した統計情報だけをクラウドに送るので、プライバシーを守ることも出来るというメリットもある。」(Preferred Networks 最高戦略責任者 丸山宏氏)

今回、ドイツ・ハノーバーで開催されるCeBIT2017で、ソラコムとPFNがおこなうデモは、エッジヘビーコンピューティングで解析した情報をソラコムでクラウドに送るというもの。そのためにはデバイス側で高度な処理性能が求められる。今回のデモでは、NVIDIAのディープラーニング用のGPUを備えた「Jetson TX1」というボードを用い、PFNのエッジヘビーコンピューティングによって、映像から人物を検出や年齢、性別推定をおこない、その結果をソラコムによってクラウドに送信する。

ソラコムの玉川憲社長とPFNの丸山宏氏のCeBIT2017での共同デモ出発前の会見では、「クラウドのソラコムとエッジのPFNは理想的な補完関係にある」と述べ、その上で今後の協業については未定だという。「あくまでテクノロジーの会社として、技術成果をまず出すことが先決。今後のビジネスについてはまだ語れない」と両氏は語るが、日本のIoTとAIの代表的な2社が組むことには大いに期待が持たれるところだ。

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