山本山11代目が語る、“50年先を見据えた”リブランディングにおける「前提条件」

ゲスト:株式会社山本山 常務 山本 奈未 氏

 1690年(元禄三年)、江戸時代に創業した日本の伝統的企業、山本山。3世紀以上にわたって海苔とお茶の販売を行ってきた。そんな山本山がいま、リブランディングに向けて動き出している。プロジェクトを率いるのは、11代目の山本奈未常務。300年以上にわたる歴史のなか、なぜいま革新が必要だったのか。リブランディングにあたってプロデュースを手掛けているbiotope佐宗邦威さんが話を聞く。

[公開日]

[語り手] 山本 奈未 佐宗 邦威 [取材・構成] 近藤 世菜 [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] タレントマネジメント デザイン思考 事業開発 企業戦略 経営×デザイン

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日本の食文化の価値を正しく伝えるために「見た目の統一化」が急務だった

佐宗 邦威(株式会社biotope 代表取締役社長):
 奈未さんと出会ってからすでに3年が経ちます。元々は、私がシカゴのデザインスクールに留学していた時代にメールをもらったことから始まり、奈未さん自身もイリノイ工科大学のサマースクールに行ったところから老舗における「経営×デザイン」の取り組みがスタートしたのですよね。まずは、改めて山本山のリブランディングプロジェクトとして、今具体的に行っていることを教えてください。

山本 奈未(株式会社山本山 常務):
 山本山は、「上から読んでも、下から読んでも」と言うCMで海苔の会社というイメージを持たれていますが、実は元禄三年に創業以来煎茶を日本で初めて販売し、玉露を発売した会社です。日本茶と海苔を販売しているのですが、平成世代向けに和食文化を継承していくために、日本橋本店のリデザインと、日本茶海苔商品パッケージのリニューアルを現在進行形で行っています。これを契機に、一つひとつの商品から会社全体のイメージにいたるまで、見た目の統一化をはかっていこうとしているところなんです。

佐宗:
 なるほど。どんな問題意識から「見た目の統一化」が必要だと思われたんでしょうか?

山本:
 私は大学時代、アメリカのアイダホに留学していて、現在もアメリカ支社の統括を担当しているのですが、大学時代に家業だったお茶や海苔について聞かれた時に、答えることができなかったことが原点です。アメリカの田舎では、「山本山」というブランドはほとんど認知されていないですし、日本茶や海苔以前に日本の食文化における海苔やお茶の大切さも正しく伝わっていないなかで、その魅力をどうわかりやすく伝えていくか、が大事だなと痛感させられました。

佐宗:
 でも、今欧米ではいわゆる「和食ブーム」が起こっていますよね。その流れで価値が再認識されるようなことはないんですか?

山本:
 和食そのものの人気は高まっていて、和食レストランの数も増えています。でも蓋を開けると、経営しているのは日本人ではなく、中国や韓国の人々なんです。日本から来たシェフは「山本山」の存在を知っていて、自然と弊社のものを信頼して使ってくれる方も多いですが、他の国のシェフはそういうわけにはいきません。中国や韓国の業者から仕入れた方が断然安いなか、弊社の商品や日本の製品の魅了をどうやって伝えて、購入してもらうかが大事になります。

佐宗:
 なるほど。だからブランド力を高めることが重要なんですね。それを踏まえて、リブランディングを通して目指していることを教えてください。

山本:
 ここではアメリカの事例を挙げましたが、そのために国内のリブランディングから始めました。山本山の海苔やお茶は、長年素材も味もこだわって作っている良いものです。食べてみると本当に味の違いがわかっていただけます。でも、若い世代はそもそも良いお茶や海苔に触れる機会が少ないため、その違いを体感したうえで選んで頂けるようにしたいと思っています。山本山はブラジルで茶園も持っていますし、海外の販路を持っているのが強みですので、日本の食文化に海苔やお茶がどれだけ重要なものか、きちんと伝えていくことで「山本山ブランド」に価値を感じ、自然に対価を払ってもらえるようにしていきたいですね。

山本 美奈株式会社山本山 常務 山本 奈未 氏

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