デザインは、ヘルスケア業界を“人間らしく”することが出来るのだろうか?

Design as strategy:第4回

 治療法から病院での経験、医療記録や保険料請求にいたるまで、ヘルスケア業界には改善される余地のある事柄が多く存在している。患者中心に移行しつつあるヘルスケア業界においても、デザインは、人を中心に置いた解決策を導く助けとなる。連載第4回では、私たちがどのようなプリンシパルの下でヘルスケア業界における課題に取り組んでいるのかを紹介したい。

[公開日]

[著] サンドラ・リン(Designit) [訳] 齊藤麻衣(Designit)

[タグ] デザイン思考 企業戦略 UX デザイン

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工場のベルトコンベアに載せられているような気分になる、年に一度の健康診断

 毎年行われる健康診断に行くと、自分が工場のベルトコンベアに載せられた部品のような気分になったことはないだろうか。次々に人から人へ、部屋から部屋へと渡され、X線撮影、心電図、医師の診察…と、かなりのプロセスをこなさなければならない。それにも関わらず、驚くほど効率的に全ての項目を終えることが出来るような仕組みになっている。効率的に終えられることは助かるけれど、しかし私たち人間は、工場の機械とは違うのだ。

 医療業界における「患者体験」では一歩先を行く、メイヨー・クリニック*1のマギー・ブレスリンが指摘するように、これまでにヘルスケア業界が直面してきたほとんどの問題は、技術に関するものであったが、いま、ヘルスケア業界が抱える最大の問題は、「どのように医療を提供するのか」ということに変わってきている。「何を」行うかよりも、「誰が」「いつ」「どのように」そして「どこで」行うかということが重要になっているのだ。

 医療者の真摯な愛情が、患者の体調に良い影響を与えることもあるし、患者がより積極的に予防ケアに取り組むモチベーションにも繋がる、ということも考えられる。一方で、一般的に医療者が置かれている環境は、効果的なケアを提供する能力が削がれるようなものであることが、多くの研究によって明らかになっている。彼らが患者と適切な関係を築けるようにするためには、仕事の単調さや不必要なストレス、そして労働環境が再評価される必要があるのだ。つまり、医療機関はただ単に患者の身体の不調を治すために機能するだけでなく、医療者側の感情を理解した上で、彼らにより良い方法で医療の提供を行って貰う方法を考えていかなければならないのだ。

*1. メイヨー・クリニック(Mayo Clinic):アメリカ合衆国ミネソタ州ロチェスター市に本部を置く総合病院。また、「メイヨー・ヘルス・システム」として、ミネソタ州内のみならずアイオワ州、ウィスコンシン州でも病院や診療所を運営している。メイヨー・クリニックは常に全米で最も優れた病院のひとつに数えられている。

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