新規事業戦略の土台となるITの4つの役割

第二回

事業開発者やビジネスリーダーにはこれからのITのトレンドの理解と活用法を紹介するITコンサルタントの斎藤昌義さんの連載講座の第二回。 今回は、「ITで新規事業をおこなう」ときの考え方の基本を解説します。

[公開日]

[著] 斎藤昌義

[タグ] ITトレンド

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ITは経営や業務の実践を支える基盤として欠かすことのできないものとなっています。「ビジネスはITと一体化」しているといってもいいでしょう。しかし、いまだ「ITは道具にすぎない」と言われることも多く、ITの本来の役割が正しく理解されていないようにも思います。ITの役割を正しく理解していなければ、それを新規事業に活かすことはできません。
そこで、ビジネスにとってITはどのような役割を果たしているのかを、まずは整理しておきましょう。

利便性の向上とビジネスの多様性を支える「道具としてのIT」

ITは仕事や生活を便利にしてくれる道具として使われています。例えば、

・ スマートフォンやタブレットを使えば、どこからでも連絡がとれます。また、地図や乗り換え案内のアプリを使えば、無駄なくスムーズに目的地に移動できます。

・ 表計算ソフトやワープロ、電子メールなどのオフィース・ソフトは、仕事の効率や質を高めてくれます。

・ 帳票や表示画面のレイアウトを画面に描いてゆくと自動的にプログラムを書いてくれる開発支援ツールを使えば、プログラミングを知らない業務担当者が、情報システムを開発することができます。

このような「道具としてのIT」は、ITの専門家に任せることのできるITです。もちろん、ビジネスの現場でどのように使われるか、あるいは使い勝手や機能などは、それを利用する業務の現場の人たちの評価に耳を傾けなければなりません。しかし、先々の技術動向や他の製品やサービスと比較したコストパフォーマンスなど、専門家でなければ判断できないことも少なくありません。「道具としてのIT」と付き合うには、テクノロジーやトレンドに精通したITの専門家主導ですすめてゆくといいでしょう。

ビジネスの効率化や品質を高める「仕組みとしてのIT」

ITが仕事の流れを円滑にし、効率を高めてくれます。例えば、

・ 業務の手順を知らなくても、注文データを入力すれば手続きは自動的に進んでゆき、関係する人に通知され、倉庫から荷物が出荷されます。請求書も自動で発行されます。

・ コールセンターでお客様からの問い合わせを受ければ、かかってきた電話番号からそのお客様の名前、過去のお問い合わせや購買の履歴が表示されます。電話で応対する人はその情報を見ながらお客様に迅速で適切な応対ができます。

・ 誰がどのように手続きをしているかを知らなくても、交通費や経費をパソコンの画面に表示された書式に従って入力してゆけば、承認手続きから銀行口座への振込まで自動で処理されます。

このような「仕組みとしてのIT」は業務の現場とITの専門家が一緒に取り組んでいかなければならないITです。
そもそも「仕組み」とは、業務の手順を作業単位、すなわち「プロセス」という要素に分解し、時間軸に沿って並べたものです。無駄なプロセスを省き、効率の良いプロセスの順序を決め、誰もが使えるように標準化します。それをコンピューター・プログラムに置き換えることで、誰もが間違えることなく仕事を進められるようにしたのが「仕組みとしてのIT」です。

経理や人事、受注、調達、生産、販売など、様々な業務プロセスがプログラムに置き換えられてきました。一旦、プログラムに置き換えられた「仕組みとしてのIT」は、人間のように融通を利かせることはできません。それを逆に利用して、「仕組みとしてのIT」を使わせることで標準化された業務プロセスを業務の現場に徹底させ、コストの削減や品質の安定、作業時間の短縮を実現しています。

一方、そんなITが停まってしまえば、仕事ができなくなってしまいます。時には経営や収益、社会に大きな影響を与えかねません。例えば、航空会社の座席予約システムが停まれば飛行機をとばすことができず社会問題になります。月末に銀行の決済システムが停止すれば、入金をうけられない企業が社員に給与を払えなくなるかもしれません。
もし、仕事の効率を高めたい、ミスを無くして仕事の品質を高めたいのであれば、その業務プロセスを改善すると同時に、それを動かしているITも手直しが必要になります。
このように「仕組みとしてのIT」は業務の「仕組み」を実現し、ビジネスの効率や品質を高める役割を果たしています。

そんな「仕組みとしてのIT」と付き合うには、経営や業務の現場の人たちが、ITの常識や可能性、その限界を正しく理解し、ITの専門家と議論しながら最適な仕組みを作り上げてゆくことが大切です。

本記事の参考プレゼン資料が日立製作所『Hitachi IoT Platform Magazine』からダウンロードいただけます。
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