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「イノベーションのジレンマ」の大誤解

「オープンイノベーションごっこ」の功罪、「リニア思考」を脱却できない人の“ジレンマ”

「イノベーションのジレンマ」の大誤解【番外編】

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 今回の連載(第6回)は「イノベーションのジレンマの大誤解〔番外編〕」として、少し『逸脱』してみます。なぜ、オープンイノベーションの活動は『ごっこ』と揶揄されるのか。大手企業のオープンイノベーションの担当者は少なからず、このプレッシャーを感じています。実はここにも既存の組織が既存の思考から逸脱できない「イノベーションのジレンマ」が潜んでいるのです。この番外編は、国内のオープンイノベーションの火種が消えぬよう、オープンイノベーション担当者が自信をもって前進できるようにお届けします。「オープンイノベーションごっこ」は必要なプロセスであり、問題はリニア思考から脱却できないことなのだ。

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大手企業が“オープンイノベーションごっこ”に陥りやすい「6つの理由」

 今回の「イノベーションのジレンマの大誤解」は少し横道に逸れたいと思います。ヘンリー・チェスブロウ教授の提唱した「オープンイノベーション」。それを少し拡大解釈して、ベンチャー企業(*1)と大手企業のオープンイノベーションが国内で浸透しはじめています。それでも、まだ黎明期であるため、各大手企業がオープンイノベーションの名のもとに多様な取り組みを始められ、そして試行錯誤されています。その実施内容をいろいろ探ってみると、コンセプトも違えば、実際の活動内容も多様です。したがって、その活動を通じて期待するアウトカムも相当違います。

 最初に、オープンイノベーションにも「オープンソーシング型」と「オープンイノベーション型」の二種類があり、これらが混同されていることに気付きます。あるテーマ・課題(ニーズ)が明確で社内やいつもの依頼先以外からも広くシーズ(アイデア・ビジネスプラン)を集めるものが「オープンソーシング型(主に企業側が意思決定主)」、一方、産業を盛り上げるということで、テーマを広範囲に取り、ベンチャーの成長自体を企業側が支援する「オープンイノベーション型(主にベンチャーが意思決定主)」があります。後者が欧米で広く見られますが、比較的高い概念(産業自体を活性化して自社も利を得るエコシステム型)なので、高い概念を考える事が今はあまり得意ではない日本では分かり難く、「オープンソーシング型」が多くなります。しかし、本来は別であり、オープンイノベーション活動の運用そのものも異なります。問題はこれらが広く混同されていることです。

タイトル「オープンソーシング型」と「オープンイノベーション型」の二種類

 大手企業が実際に「オープンイノベーション活動」をしてみると、良質なベンチャー企業をソーシング(探索)することは大変で、数も集まらない。良質なベンチャー企業であればあるほど、ベンチャー企業からは近づいてこない。自社の思惑通りに社外のベンチャー企業が素直に言うことを聞いてもくれない。ベンチャー企業にとっては回り道をする余裕がないため、大手企業の自社都合の言い分など聞いてもいられないし、ましてや大手企業の業績に貢献をしようとなど“露ほども”思っていないわけです。

 大手企業とベンチャー企業とのオープンイノベーションのスタートラインでは、「ベンチャー企業が、自社に都合よく近づいてきてくれ、その資源を容易に提供してくれて、自社の業績に貢献してくれる」。こんな自社都合の甘い目論見、妄想からスタートするわけです。(厳密に言えば、担当者はそんな思い通りにいかないと分かっていても、自社都合の実施計画でなければ社内で合意を取れない雰囲気を感じ取り、“無理筋”とわかっていながら進んでしまうケースが多々あります。)

 大手企業はベンチャー企業とのオープンイノベーション活動を実施してみると、思い通りにならないことばかりで、現実を突きつけられるのです。社外のイノベーションコミュニティに接触したり、オープンイノベーションイベントを開催したり、VCファンドへLP出資したりすることで、ベンチャー企業との接点を増やし、大手企業はその初期プロセスを経験し、いかに社外のベンチャー企業と付き合っていくのかを学んでいくのです。

 オープンイノベーション活動は、試行錯誤の中で以下のようになる可能性を孕んでおり、説明合理性が脆弱であるゆえに、批判に晒される可能性が高いのも事実で、「ごっこ」と評価されてしまうのです。

  1. 経営陣から指示され「やらされ仕事」になりやすい
  2. 事業創造に繋がらないビジネスアイデアのマッチングイベントが中心的な活動になる
  3. 経済実態が伴わない内容がメディア掲載される
  4. シリコンバレーツアーに出かけるが、実際のビジネスに繋がる意思決定はできない
  5. VCファンド等へLP出資するが社内の新規事業やイノベーションには直接的に効果がない
  6. コラボレーションオフィスを創るが、イノベーションが起きない

タイトル「オープンイノベーションごっこ」に陥りやすい6つの要素

 上記のように、事業創造にたどり着く前までのプロセスは一見華やかで楽しそうなプロセスであり、収益貢献度が不明なので、周囲から反感や嫉妬を感じられてしまいます。

(*1) 短期的な成長でエグジットを狙う「スタートアップ」と和製英語として定着した「ベンチャー企業」を分けて考えるべきですが、本文においては、国内で使いなれた「ベンチャー企業」を使用しています。

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鈴木 規文(スズキ ノリフミ)

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合田 ジョージ(ゴウダ ジョージ)

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村上 恭一(ムラカミ キョウイチ)

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