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東京大学大学院・高木准教授に聞く、DXがもたらすデフレーミング時代の「企業」と「個人」の生存戦略とは

ゲスト:東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授 高木 聡一郎氏【後編】

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 社会全体でデジタル化が進み、収集されたデータの分析・活用によりビジネスをドライブすることの重要性が語られるなかで、さまざまなシーンで、デジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉を聞くようになった。東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授の高木聡一郎氏は、このDXの土台となる情報技術の進化によって、さまざまな枠がなくなっていく「デフレーミング」という現象が起きていると主張する。そのデフレーミングの三つの構成要素のうち、一つを前編で聞いた。残りの二つの要素と、デフレーミング時代の働き方の変化、大企業の生き残り方を紹介する。

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「範囲の経済」で実現可能となる、デフレーミングを構成する要素2「個別最適化」とは

Biz/Zine編集部・栗原(以下、編集部):前編では、1:デジタル・トランスフォーメーション(DX)を支える情報技術が、AI、IoT、5Gといった生産性を向上させるグループと、プラットフォーム、ブロックチェーンなどの人と人との関係性を変えるグループに分けられること、2:情報技術によって大量生産型の商品やサービスというパッケージや、働く人が所属する組織といったさまざまなフレームがなくなるデフレーミングの時代であること、3:デフレーミングを構成する三つの要素の一つめ「分解と組み替え」に関して、お聞きしました。

 今回は、デフレーミングを構成する要素の二つ目からお話をお聞かせください。

東京大学大学院情報学環・学際情報学府 准教授 高木聡一郎氏(以下、敬称略):デフレーミングを構成する要素の2つめは「個別最適化」です。前編でもお伝えしましたが、今までの経済の黄金法則は大量生産・大量消費を促すことで、生産コストを下げて規模の経済を利用していくというものでした。ただ、大量に生産するためには、多くの人がそこそこ満足する商品を作るしかありません。

 しかし、それが情報技術の進歩によって変わりつつあります。製造業の世界でも、既製品の枠を超えてユーザーに最適化する、カスタマイズしながらスケールできるようなマス・カスタマイゼーションの技術が生まれてきているのです。

 たとえばNIKE IDでは、靴の配色やサイズを自由にカスタマイズして発注できます。これは、ユーザーのニーズをうまくデータ化するWEBサービスができて、それを工場に伝える通信技術があり、工場の中で注文をうまく生産ラインにのせる技術があることが非常に大きいのですが、そういったインテグレーションを行うことで、カスタマイズのコストがとても小さくなったんです。

編集部:ZOZOがやろうとしているのも同様のことですよね。

高木:そうですね。ZOZOは、ドット柄を画像解析することで体を計測しようとしているところが技術的には新しいですけれども。ネットの世界では、検索結果や利用履歴に応じてそれぞれの人に適したものを表示するようなパーソナライズ化はかなり前から行われていました。そういったことがリアルの製造業でもどんどん行われるようになっています。

 ハードウェアも小さな単位で注文ができるようになってきています。中国・深センの「Seeed」という企業は、設計データを送信すれば電子基板を十枚単位で作ってくれるので、自分のオリジナルの照明器具を作りたい等の小規模ロットでの注文もできるようになっているのです。そしてこのSeeedがおもしろいのは、設計データをオープン化して、Aさんが作ったものをBさんが流用して新しいものを作る…というエコシステムができているところです。そうなると、イノベーションがどんどん加速しますよね。

編集部:デジタルのデータがあるからできることですね。おもしろいですが、知的財産はどうなっているのでしょうか。

高木:もちろん全員のデータが自動的に公開になってしまうわけではなく、データを公開してもいいという人のものが公開になるようです。深センの強さは、そういったイノベーションが活発に起こっていることですね。

 また中国ではありませんが、教育に関しても「Udemy」という学びたい人と教えたい人が繋がるプラットフォームが生まれています。大学のようにパッケージされたものではなく、本当に必要だと思うものをつまみ食いできるんです。これもサービスの個別最適化の一つです。

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