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ビジネスモデルに効く戦略・戦術はデルタモデル:後編

第27回

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具体的な戦術にはどのようなものがあるのか?

 冒頭でお話ししたとおり、ビジネスモデルとの関係でいえば、戦術は9つのビジネス要素(ビルディングブロック)に焦点を当てるものです。戦術(または機能戦略)は多岐にわたるため、全てをご紹介することは不可能ですが、参考になる書籍を3冊ほどご紹介しましょう。

 1冊目は、『市場破壊戦略』という書籍で、5つのタイプの戦略と40の戦術が紹介されています。たとえば、顧客体験を見直すという戦略(これは顧客インターフェースに焦点を当てる戦略ですね)では、消費チェーンを再構築する、消費チェーンを高速化する、きっかけを独り占めにするといった戦術と事例が記述されています。

 2冊目は、ビズジェネのイノベーターの本棚でも紹介された『ビジネスモデル・イノベーション』です。こちらの書籍は、10のタイプのイノベーションと100以上の戦術が紹介されています。10のタイプのイノベーションは、ビジネスモデル(またはビジネスモデルキャンバス)にマッピングして考えることもできそうです(図5)。

10のタイプのビジネスモデル・イノベーション図5:10のタイプのビジネスモデル・イノベーション

 たとえば、「プロダクトシステム」というイノベーションタイプでは、補完オファー、プラグイン、モジュールシステム、バンドリングといった6つの戦術が取り上げられています(図6)。

プロダクトシステムの6つの戦術図6:プロダクトシステムの6つの戦術

 事業戦略は1つでも、それを実践する戦術は複数策定されることが多いでしょう。ただし、良いビジネスモデルは「自己強化型の構造」をもっていなければなりません。つまり、1つ1つの戦術が優れているだけでは十分ではなく、優れた相互作用を生み出す仕組みを構築する必要があります。また、事業戦略は大きく変えることはなくても、戦術は柔軟性を持たせながら、環境変化に応じて調整できることが重要になります。

 図は、ザッケローニ監督の試合前の作戦のように見えますが、実は以前ご紹介した因果ループ図の変形です(図7)。赤色のボックスは戦術、灰色のボックスは戦術を正しく実行することによって比較的短期間で現れる結果、オレンジ色のボックスは一定時間の経過後に現れる結果を示しています。適切な戦術は最終的に利益を生み出し、その利益はさらなる戦術に再投資されるというプラスのループを生み出します。それは、戦術に長けたサッカーゲーム に例えることができそうです。

 

適切な戦術実行によるプラスのループ図7:適切な戦術実行によるプラスのループ

 ところで、サッカーと同じく戦略や戦術の実行はライバル企業との駆け引きでもあります。前述のような機能的な戦術ではなくて、心理的な駆け引きとしての戦術を理解するために、3冊目として『兵法三十六計の戦略思考』という書籍をご紹介して締めくくりたいと思います。本書は、現代ビジネスのケースを交えながら効果的な36の戦術パターンが紹介されています(例.遠い関係にある第三者との協働を通じて、近くにいるライバルを攻める)。

 次回は、ビジネス計画の論理的な構造を表すモチベーションモデルの最後のテーマである指針(ビジネスポリシーとビジネスルール)を取り上げる予定です。

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この記事の著者

白井 和康(シライ カズヤス)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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