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人工知能社会論からの考察

「AIは仕事を奪うか?」という問題を経済学的に考察してみる

第2部 第2回:

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「技術的失業」とは何か?

 「先生!僕、会計士になりたいんだけど、どう思いますか?」と学生に聞かれたことがある。私は返答に戸惑った。会計士は消滅する可能性の最も高い知的職業だと言われているからである。

 近頃、「AIが労働者の仕事を奪うか?」といった問題が盛んに論じられている。その中には、これまでの資本主義の歴史において、新しい技術の導入による失業が大きな問題になったことがないので、これからも大丈夫だろうという根拠薄弱な楽観論がある。果たしてそうだろうか?

 私たちは、過去の歴史から得られた知見がそのまま自動的に未来にも当てはめられると考えるべきではないだろう。過去と未来で前提が異なれば、帰結もまた異なってくる。

 新しい技術の導入がもたらす失業は、経済学では「技術的失業」と言われている。例えばそれは、「銀行にATMが導入されて、窓口係が必要なくなり職を失う」とか「Amazonなどのショッピングサイトの普及によって、街角の書店が廃業に追い込まれ従業員が職を失う」といった失業のことである。

 技術的失業は、イギリスで起こった最初の産業革命の頃 (1770~1830年) から経済学者によって多少たりとも議論されてきた。ところが、技術的失業は結局のところ、一時的で局所的な問題に過ぎなかった。それは、失業した労働者が機械にはできない別の業務・職種を担うようになったり、機械化されていない別の産業に「労働移動」したりするからである。

 例えば、産業革命期には、紡績機(糸をつむぐ機械)や紡織機(布を織る機械)などの機械が導入され、手織工の仕事が失われていった。しかし、そういった機械を操作するための工場労働者の需要はむしろ増大し、失業者はそこに吸収されていったのである。

 AI が発達した未来でも同じように、なんらかの職種・業務の増大が失業者を吸収していくだろうか?

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この記事の著者

井上 智洋(イノウエ トモヒロ)

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