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人工知能社会論からの考察

“雇用なき成長の時代”を戦略的に考える―「汎用AI」と「ベーシックインカム」

第2部 第3回:

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「雇用なき成長」時代へ

 2030年頃に出現すると言われている汎用AIが人々の雇用を“順調に”奪っていくと、2045年くらいには、全人口の一割ほどしか労働していない社会になっているかもしれない。

 2015年度の就業者数は全人口のおよそ半分の6400万人である。「総務省統計局・労働力調査」の「産業,職業別就業者数」によれば、クリエイティブ系、マネージメント系、ホスピタリティ系と位置づけることができる「管理的職業」「専門的・技術的職業」(研究者や教育者、医者など)「サービス職業従事者」(介護、調理、接客・給仕など)の合計は、1900万人ほどである。

 汎用AI・ロボットは、こうした職業にも遠慮なく参入してくるので、1900万人のうちの例えば半分くらい、950万人くらいしか生身の労働者は必要とされなくなっている可能性がある。これは、全人口の1割弱に相当する。私は1割というこの数値にそれほどこだわりを持っていない。強調したいのは、汎用AIによって雇用の大部分が破壊されるということである。そのようにして多くの労働が消滅した経済で成長は可能なのだろうか?

 AIは雇用を増大させ成長をもたらすという論者がいる一方で、AIは雇用を破壊し経済成長を停滞させるという論者がいる。ポジティブな人は物事のポジティブな面しか見ないし、ネガティブな人は物事のネガティブな面しか見ない傾向がある。しかし、汎用AIが雇用を破壊しつつも経済成長をもたらすという未来もあり得る。「雇用なき景気回復」(ジョブレスリカバリー)という言葉があるが、2030年以降は「雇用なき成長」が経済の基調になっているかもしれない

 本記事ではそうした点を明らかにしようと思うが、そのための準備としてまず汎用AIの経済史的な位置づけについて考えたい。

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この記事の著者

井上 智洋(イノウエ トモヒロ)

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