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天才への「敬意」と「降伏」――表裏一体の感情がもたらす思考停止は「GRIT―やりぬく力」で打破する

書評:『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』

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「目的志向」と「快楽志向」の違いをGRITスコアで紐解く

2:「その情熱はホンモノか?」とGRIT様は問う

 GRITは「情熱」と「粘り強さ」の2要素で構成されています。粘り強さに関しては「でしょうね」感こそ否めませんが、情熱なら私にも何とかできそうな希望を感じました。韓流アイドルにハマったことをきっかけに始めた韓国語の勉強は、「彼らの曲やMCを字幕や通訳なしで理解したい!」「彼らと会えた時に韓国語で話したい!」という情熱によって継続を支えられているからです。しかしながら本書は働く大人に向けたビジネス書、フィールドを趣味から仕事に移した場合、どうでしょうか。以下の一文から考えていきたいと思います。

自分の仕事は個人的に面白いだけでなく、ほかの人々のためにも役立つと思えることが絶対に必要だ(P133、7行目)

 お給料が入ったら買いたい物や、行きたい国への情熱を燃料にしていた自分が恥ずかしくなります。さらに残念なことに、こうした物欲や旅行欲は「情熱」にあらず、「快楽」なのだそうです。

人間はいっぽうでは快楽を追求する。なぜなら全般的に言って、快楽をもたらすものは生存の確率を高めるからだ。(中略)
いっぽうで、人間は進化し、「意義」と「目的」を探求するようになった。もっとも深い意味において、人間は社会的な生き物であり、周りの人びととつながって互いに奉仕することも、やはり生存の確率を高める。(中略)
したがって、人間は誰でもある程度は、「快楽」を得られる幸福も、「意義」と「目的」を得られる幸福も、どちらも追求するようにできている。しかし、どちらを多く追い求めるかは、人によって異なる。

 進化前OL(?)としては、“ある程度”のという枕詞がつくものの、快楽の重要性も示してくれた著者に感謝したい。ただ、本書のテーマ「GRIT」の観点においては、目的志向の強い人の方が、快楽志向の強い人に比べてGRITスコア(=やり抜く力を図る指標。「情熱」と「粘り強さ」のスコアを合計して出す)が高いのである。あはれ、進化前OL……。

分かっちゃいるけどやめられない

GRIT筆者とGRIT

 私のつたない感想文や、どこかで本書のレビューをご覧になった方は既にお気付きのことと思いますが、この本には当たり前のことしか書かれていません。「歯磨いて寝ろよ」や「テレビは明るいところで画面から離れて見てね」と同じくらい昔から当然のこととして言われてきた、あまりにもシンプルなメッセージ「継続は力なり」を、一流の事例を引き合いに説得力を持たせ、丁寧に再提示してくれる一冊でした。また、引き合いに出される事例は「才能がすべてではない」ということも同時に教えてくれるので、我々の「どうせ無理」は少しだけ解除されます。それでもやはり、快楽志向の強い進化前OLであるところの私の脳裏には、「分かっちゃいるけどやめられない」の一節が流れてしまいます。あはれ、進化前OL。

 イチローはまさに“ミスターGRIT”と呼ぶにふさわしき努力と継続と目的の鬼ではないかと、感想文をまとめながら思い当たりました。本書を読む前も読んだ後も、どのみち私はイチローと、彼の凄さを語る友人の心酔に、心酔し続けることでしょう。そしてこの感想文コンテンツに第2回が存在するかどうかは、私のGRITにかかっていると言えましょう。まずはこのコンテンツの意義を見つめ直すことから始めるとします……。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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