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上司と部下双方をがんじがらめにする人事評価システムからの解放を

Vol.2

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リーダーは自身の「野心」と「物語」を語るべき

 「野心のマネジメント」では、「充足感」を非常に重要な要素と考える。等身大の自分を知り、それにふさわしい舞台で「必ずできる」と確信しているとき、人は充足感が得られる。心が充足感で満たされると、不安や嫉妬、欲望、執着といったネガティブな感情から解放される。

 「自分に本当にできるのだろうか」と疑いながらよりも、認められていることへの感謝の気持ちや誇りを持って仕事をする方が、はるかに良いパフォーマンスが上げられるはずだ。

 現代人の生活は、充足どころか「不足」を感じさせられる機会が多い。メディアや広告は、「足りない」ことを強調することで、人々のコンプレックスを突き、不足を満たしたいという欲望を煽る。「不足」が無意識にも刷り込まれると、不安や怒りが蓄積してイライラが募り、充足感などとうてい得られない状態に陥る。

 「足りない」という無意識は、上司が部下をコントロールしたいという欲望にもつながる。目標未達や改善点にばかりフォーカスし、部下にプレッシャーを与えることになりかねないのだ。

 たとえば部下から報告を受ける際に、うまくいかなかったことだけでなく、そこから学んだこと、この点に関しては想定通りだった、などポジティブな点についても聞くといい。部下にもっと努力が必要と感じた場合でも、「才能や素質を認めている」ことを必ず言い添えることだ。

 部下の野心を認め、それに向かっての努力に充足感を与えるために「物語」を活用してもいい。ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンと、エイモス・トベルスキーは、物語(ナラティブ)の重要性を研究によって明らかにしている。上司が、過去の成功や、どんなことで、いかに充足感が得られたのかという物語を、部下の野心と関連づけながら語る。それが、部下がいっそう誇りと充足感を持って働くことにつながる可能性が高い。

 アップルの共同創業者、スティーブ・ジョブズは決して人格が全面的に優れていたわけではない。「トップとしてこうあるべきだ」などと意識したり、意識して人々に影響を与えるようにリーダーシップのテクニックを駆使したりしていたわけでもなかった。彼が行ったのは、自分自身の、そして会社としての「野心」を語り、実際の開発プロセスの「物語」を伝えることだけだった。だが、ジョブズのもとには、彼の野心と物語に共感し、自らの野心に結びつけたいと願う多くの才能が集まったのだ。

 トップやリーダーは、メンバーの人格や感情、才能や野心を尊重すべきだ。そして彼らに感謝し、寛大な態度を示した方がいい。しかし、だからと言って、いつでもニコニコと愛想よく、機嫌よく振る舞えというわけでもない。大事なのは、自身も野心と、それに関連する知識欲と好奇心、探究心を失わず、それを部下たちに示すことに他ならない。それらが伝われば、必ずや彼らの野心を喚起し、組織全体にもプラスの効果をもたらすだろう。

(翻訳協力:株式会社トランネット)


SERENDIP編集部コメント

 「野心なんて、そんなものないよ」と言う読者もいらっしゃるかもしれない。ただ、たいていの「野心」は、個人のライフヒストリー(=物語)と結びついている。まずは、自身のこれまでの歩み、印象に残るエピソードなどを振り返ることで、自分の心の奥底に眠る「野心」を掘り起こしてみてはいかがだろうか。

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『Freiheit für Manager: Wie Kontrollwahn den Unternehmenserfolg verhindert』(組織の未来を培う「野心のマネジメント」)

Dorothea Assig, Dorothee Echter 著 | Campus Verlag | 269p

書影目次
1.マネジャーに自由を
2.最高のパフォーマンスを引き出す
3.等身大の自分を知ることは成功への近道
4.ユニークな存在になることで、会社に利益をもたらす
5.イノベーション、信頼、影響力そして成長―すべては充足感から
6.トッププレーヤーの自覚を持つ
7.権力を使いこなすために
8.トップマネジメントの中で新たに学ぶ

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