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ビジネスアジリティとデザイン

ものづくりは「体験デザイン×リーン×アジャイル」へ──日本企業にアジャイル開発が浸透しない理由とは?

第2回

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 本連載では、「使いたい!」をデジタルプロダクトで実現し続けるための具体的方法である「体験デザイン×リーン×アジャイル」を中心テーマとして、論を進めます。前回は、「使いたい!」を実現するために必要な「制度・組織・人」について、最近注目されている「ビジネスアジリティ」の観点から考察しました。今回は、現実的にビジネスアジリティの出発点となる「アジャイル開発」が日本で広まらない要因の考察、そして「使いたい!」をデジタルプロダクトで実現し続けるための具体的方法である「体験デザイン×リーン×アジャイル」の概要について述べていきます。

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日本でアジャイル開発が浸透しない幾つかの理由

 前回、ビジネスアジリティの重要性と、アジャイル開発がその実現にドライブをかけていることをお伝えしました。しかしこれは世界の潮流であり、日本は残念ながら周回遅れと言っても過言ではありません。そこで今回はまず世界と日本のアジャイル開発の現状から見ていきましょう。

 「アジャイルソフトウェア開発宣言」が生まれて20年、アジャイル開発はソフトウェア開発の世界を劇的に変えてきたといえます。米国VersionOne社が毎年行っている欧米を中心とした企業のアジャイル開発の導入率に関する調査[1]では、その導入率はほぼ100%となっています。VersionOne社はアジャイルツールを提供している会社ですのでこの数値にはバイアスがかかっている可能性が大いにありますが、筆者が所属するタイガースパイク社(世界12拠点に展開するデジタルエージェンシー)でも、日本以外の全ての拠点では、ほぼ100%、アジャイル開発が前提となっています。

 タイガースパイクの本社があるオーストラリアでは、政府が「アジャイルとユーザー中心のプロセス」という指針を提示しており、行政系のプロジェクトであってもアジャイル(+ユーザー中心)で実施することが当たり前になっています。そのような環境なので、オーストラリアのタイガースパイクでは、政府や行政向けに、すでに数多くのアジャイル開発プロジェクトを手掛けています。

 では、日本の現状はどうでしょうか。さまざまな調査結果がありますが、ガートナーの2019年の調査[2]で、アジャイル開発の導入率は30~40%程度(従業員2,000人以上)となっており、欧米との差は非常に大きいと言えます。ただ、欧米もアジャイル開発が急激に伸びたのは2015年以降ですので、ここから日本が変わっていけば、時差は5、6年程度で収まります。

 ではなぜ、日本ではアジャイル開発の導入が進んでいないのでしょうか?

 1つの大きな要因としては、日本特有のSIer文化[3] が挙げられます。例えば米国では、IT人材の65%は、事業会社に所属しています。翻って日本では、IT人材の72%が、IT企業(ITベンダーやSIer)に所属しています。成果物を事前に定義しないアジャイル開発は、自社リソースであれば着手しやすいですが、外部ベンダーにロックインされた状態で取り掛かるにはかなりハードルが高いため、このことが着手を遅らせる要因となっています。

 もう1つの大きな要因として、日本の経営が「ものづくりの20世紀パラダイム」に支配されていることが挙げられます。次ページにて詳しく見ていきましょう。


[1]VersionOne「15th State of Agile Report」(JULY 9, 2021)

[2]ガートナージャパン「ガートナー、アプリケーション開発 (AD) に関する調査結果を発表」(プレスリリース 2019年2月21日)

[3]IPA『「グローバル化を支えるIT人材確保・育成施策に関する調査」調査結果

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この記事の著者

根岸 慶(ネギシ ケイ)

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