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地域企業のグローバル戦略

地域発グローバル企業にある、土地に由来する「創業の物語」──レオン自動機の競争優位の源泉とは?

第3回

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社名の由来は「レオロジー(流体学)」

 レオン自動機は、「包餡(あん)機」で世界シェアナンバーワンの企業です。同社の包餡機で製造される商品は、饅頭類、肉まんやあんまん、月餅、ピロシキ、スコッチエッグ(卵が入ったハンバーグのようなもの)やチーズ入りハンバーグなど、世界中の「何かを何かで包んでいる食品」です。誰もが知る定番の菓子や、ファミリーレストランの看板メニューも同社の装置を使って作られています。レオン自動機の名前を知らない人でも、同社の装置で作られた食品を食べたことがあるはずです。

 現在の主力製品は、包餡機と製パン機です。両者に共通しているのは「ベトベト(粘性)していて、プヨプヨ(弾性)していて、液体と固体の間のような流体」を扱っていることです。パンの生地をイメージすると分かりやすいでしょう。こうした物質を扱う学問を「レオロジー(流体学)」といい、社名の由来になっています。

 レオン自動機は1963年、宇都宮で創業しました。創業者の林虎彦は和菓子職人で、日光・鬼怒川温泉の観光地で和菓子店を営んでいました。虎彦の店は繁盛していましたが、饅頭の製造が重労働で、新しいメニューを開発する時間がなかなか取れませんでした。そこで虎彦は饅頭の製造を自動化しようと考え、長年にわたる試行錯誤の末、独学で包餡機を開発しました。

 同社のグローバル展開は早く、創業5年後の1968年に輸出を開始し、1969年にはドイツ、1970年にはアメリカに研究所を設立します。現在の売上は6割弱が日本、残りは北米や欧州、アジアなどの海外です。2020年には「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれています。饅頭の製造装置からスタートしたレオン自動機は、なぜ地方発グローバルトップ企業になることができたのでしょうか。

“専用機ではなく汎用機”で多様な食品に対応する

 レオン自動機の包餡機が製造している主な食品は和菓子、洋菓子、調理食品です。食品ごとに、大きさや長さ、材料、比率(中身と外皮)が異なります。材料が異なれば、粘性(粘り気)と弾性(柔らかさ)、製造する際の温度も異なります。これに加えて、一日に作りたい数量も異なります。そのため、包餡機と一口に言っても製造の際に求められる要件は多岐にわたります。それにもかかわらず、レオン自動機は多様な食品を、食品ごとの「専用機」ではなく「汎用機」で製造しています。

 同社の汎用包餡機は「火星人」というユニークな商品名です。この名称は、2代目として開発した包餡機(見た目が火星人のようだということから)から代々継承しています。火星人は現在までに20回以上改良されており、初代からは大きく変わっています。現在、汎用機とされている装置は10種類程度あり、その範囲で汎用性を持たせています。なお、現在は顧客の要望も多様化しているため専用機の割合も増えていますが、可能な限り汎用機で対応することを基本にしています。

火星人CN700レオン機「火星人CN700」(写真出典:レオン自動機HP「製品案内 火星人CN700」より)

 汎用機を用いることのメリットは、同じ装置や部品を大量生産することで規模の経済効果が得られることです。また、海外展開に際しても現地向けのカスタマイズは不要なので、グローバル化によって規模の経済効果はさらに大きくなります。

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模倣困難性の源泉は、食と装置をつなぐ存在

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この記事の著者

金子 浩明(カネコ ヒロアキ)

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