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大坂祐希枝氏が語る、製造業のカスタマーサクセス活用方法とは? 事例から学ぶ成功と失敗の分かれ道

Biz/Zine Day 2022 SummerレポートVol.9

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 製造業においては、サブスクリプションやSaaSとは異なるカスタマーサクセスの定義と活用方法がある。そう語るのは、一般社団法人カスタマーサクセス推進協会 代表理事の大坂 祐希枝氏だ。同氏は製造業のカスタマーサクセスを、「顧客の動きを羅針盤にしてイノベーションを起こして、そのことによって継続的な顧客との関係や継続的な利益を生み出すこと」と定義。「Biz/Zine Day 2022 Summer」にて、実際にこれまで見てきたカスタマーサクセスの成功事例やポイント、大企業が陥りがちな失敗について語った。

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カスタマーサクセスで実現したWOWOWのV字回復

 大坂 祐希枝氏(以下、大坂氏)は2006年、有料放送を運営するWOWOWの解約防止部門で、初代責任者に抜擢された。当時のWOWOWは、有料放送の加入世帯数が4年連続で減少していたが、同氏は、当時はまだ日本に浸透していなかったカスタマーサクセスの手法により、就任後12年連続で加入世帯数を増加させたという。その頃の同社は、全体の売上のうち95%以上を会員の視聴料が占めており、加入世帯数と売上はほぼ比例していたため、「カスタマーサクセス的な手法で加入者数を回復させたことが、業績回復を実現した」といえるだろう。

 そもそも、「カスタマーサクセス」とは何か。書籍などでは、「商品やサービスの価値を最大限活用できるように促して顧客を成功に導き、それによって自社も継続的に発展すること」とされている。あるいは、もっと直接的に「新規の顧客だけではなく、既存の顧客に注目して、長期契約やクロスセルによってより多くの売り上げを生み出す活動」と書かれていることもある。

 しかし、大坂氏はそれだけでなく、製造業におけるカスタマーサクセスは事業戦略であるとした上で、「顧客の動きを羅針盤にしてイノベーションを起こし、顧客との継続的な関係、利益を生み出すこと」と語る。

 まず、大坂氏がWOWOWをカスタマーサクセスによってV字回復させた軌跡をみてみよう。同氏が2006年当時、解約防止部門の責任者に就任した際にまず行ったのは次のような取り組みだ。

 大坂氏に託されたミッションは、「解約を減らす」ことだった。そこで、まず同氏は“顧客データ”を獲得し、蓄積することから始めた。なぜなら、当時の社内には顧客リストこそあったものの、カスタマージャーニーの各ポイントに沿って抽出した顧客データは存在していなかったからである。

 その後、カスタマージャーニーの各ポイントにおけるカスタマーインサイト(消費者の購買行動の根底にある、時には本人さえも気付いていない動機・本音・ニーズ)をデータ化し、そこからKPIを把握して、データ分析によって解約の原因や背景を探りだしたのである。

 その結果、営業手法の抜本的な改革が必要であると分かった。代理店頼みの新規顧客獲得や、キャンペーン重視の施策などといった旧来の手法が、解約の増加を招く主要因だと判明したからだ。これを機に、WOWOWは開局以来の手法や仕組みを大きく変えていった。組織の改変や予算配分の変更も必要となり、改革は痛みを伴うものであったという。

 解約者像や解約理由が分かるようになると、同社が最も優先して行うべきことは「優良顧客(長期加入者)を増やすこと」だという新たな視点が生まれた。そこで、長期会員となっている優良顧客がWOWOWのどういった点を評価しているのか分析することで、自社が提供している価値を明確化。新たに優良顧客を獲得するためには、その価値を未加入の人々にどう訴求すればよいか考えるようになったのである。

 WOWOWの商品は「番組」だ。そこで同社は、顧客一人ひとりに最適な番組を紹介して解約を阻止する、独自のレコメンドシステムを作り上げた。さらに、「優良顧客とインサイトが似ている人を新規顧客として獲得していく」というストーリーも描いた。

[画像クリックで拡大表示]

 ここまでの取り組みの中で大坂氏が“基本”とするのは、①顧客データの作成、②KPIの把握とデータ分析である。データが重要であることは誰もが認めるところだが、必要なデータがとれていないという企業は少なくない。「まず、自社の顧客の行動やインサイトをデータで把握し、そこからリテンションや、自社ならではの提供価値に基づいた顧客のエンゲージメントを探って、優良顧客になりやすい新規顧客の獲得を行う」という流れが望ましいだろう。

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この記事の著者

フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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