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DX推進リーダーに必要な変革に抵抗する力への処方箋──デジタル庁や大阪ガス、アカデミックの実践知から

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 現在、多くの企業が取り組むDX。歴史が古く、部門ごとにオペレーションを研ぎ澄ましてきた企業ほどDXが難しく、変革というよりは改善で終わってしまうという話も聞く。官僚的な大組織がDXを成功させるためには何に意識すればよいのだろうか。  世界でも先進的な政府組織のDX事例として知られている、イギリス政府Government Digital Service(GDS)での経験をまとめた『PUBLIC DIGITAL(パブリック・デジタル)――巨大な官僚制組織をシンプルで機敏なデジタル組織に変えるには』出版を機に、共著者のアンドリュー・グリーンウェイ氏が来日。日本語版監修者で武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授の岩嵜博論氏がファシリテートし、東京大学公共政策大学院准教授の青木尚美氏、デジタル庁企画官の吉田泰己氏、大阪ガス株式会社 DX企画部の出光啓祐氏が話し合った。そのパネルディスカッションの内容を紹介する。

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アンドリュー・グリーンウェイ氏単独講演レポート(2022年9月22日公開)

なぜ英国政府GDSはDXに成功したのか──巨大な官僚制組織での変革の進め方、組織文化やプロセス

DX推進リーダーに必要な変革に抵抗する力への処方箋

 まず紹介したいのは東京大学公共政策大学院准教授の青木尚美氏の講演である。青木氏の専門はパブリックマネジメント(パブリックセクター特有の事情を踏まえつつ、経営的な観点から行政の組織や人材のマネジメント及び公共ガバナンスのあり方を考察する分野)であり、シラキュース大学マックスウェル行政大学院にて行政学のPhDを取得。シンガポール国立大学で8年半の間、教鞭をとった経験がある。その立場から、官僚的大組織の中で変革を起こす際の抵抗要因について語った。

 変革を起こそうとする際、リーダーは「変革を後押しする力」と「変革に抵抗する力」の均衡度合いを見て管理する必要がある。「変革に抵抗する力」を変えていくことも、DXの成功には重要な要素となる。

 では、「変革に抵抗する力」とは何だろうか。一般的には次のようなものが挙げられる。

変革に抵抗する力
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 1つ目の「組織レベル(Organization Level)」については『PUBLIC DIGITAL』で詳しく取り上げられている内容である。DXを推進する際にヒエラルキー組織が問題になったり、大企業や行政組織がテック系人材と仕事をする上で組織文化を新たに醸成しなければならなかったりする。また日本企業でいう「縦割り」、つまりサイロの問題もデータを統合してサービスをデリバーするのに大きな困難になる。

 2つ目が「ワークグループレベル(Work Group Level)」での変革に抵抗する力だ。いつも同じ組織の人と仕事をしていると次第にグループ内に特定の規範が形成されたり、集団凝集性が高まったりすることで、意思決定に影響を与えるようになる。例えば、画期的な変革のアイデアやその必要性を唱える声があったとしても、グループとして組織の和を優先するために採用されないことはときにはあるだろう。

 3つ目に青木氏が指摘するのは「個人レベル(Individual Level)」での変革に抵抗する力の問題だ。多くの場合、このレベルの抵抗が非常に大きい。自分の仕事を失う恐れがあったり、社会的関係が壊れるかもしれない恐怖があったり、今まで慣れ親しんだものを変えることへの嫌悪感があったりする。また、「選択的知覚(Selective Perception)」とは、企業全体や国家全体での必要性よりも、自部門や自分自身への影響の方をより強く感じてしまうことを指す。

 他の要素にも言及する。「ここで開発・発明されてないから受け入れない症候群(Not-Invented-Here Syndrome)」という現象があるが、青木氏によると、これもDXの抵抗要因になりうる。自分たちのことは自分たちがよく知っていて外部で開発されたものは信用しない、という個人、そしてグループ全体の考え方が、DXを推進するにあたって妨げとなる。

 さらに、マインドセットの問題もある。さまざまなマインドセットが個人レベルにも組織レベルにも影響を与えることは多くの面で実感されていると思うが、デジタルコンピテンシーの習得に対する硬直的なマインドセットと、DXを協働的ではなく競争的変革だと捉えるマインドセットが大きな問題となる。DXリーダーはこういったマインドセットを変えていくなど、さまざまな方向から「変革に抵抗する力」を減らすようにしていくことが必要だと青木氏は語った。

青木尚美
東京大学公共政策大学院 准教授 青木尚美氏

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フェリックス清香(フェリックスサヤカ)

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