濱口氏が語る「クリエイティブプロジェクト」の進め方

monogoto 濱口 秀司 氏インタビュー:第3回

 製品やサービスの開発で新しいアイデアを生み出していくには、プロジェクトの情報量の管理も重要だ。日本初のイントラネット構築、USBメモリの発明など、幅広い業種のイノベーションに携わってきた濱口秀司氏に、発想重視の「クリエイティブプロジェクト」の進め方について聞いた。前回記事はこちら、前々回記事はこちら

[公開日]

[語り手] 濱口 秀司 [取材・構成] 有須 晶子 [編] BizZine編集部

[タグ] デザイン思考 バイアス プロジェクトマネジメント クリエイティブ アイデア

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悪魔のチャートの「ラストミニッツクライシス」とは?

--発想が中核となるクリエイティブなプロジェクトをどう進めていくべきか。濱口さん流の方法論を教えてください。

 まず、クリエイティブなプロジェクトの時間軸についてお話ししましょう。

 プロジェクトには必ず、スタートとエンドがありますが、通常まずスタート時には競合調査やユーザ調査など情報収集のフェーズを経て、その情報をもとにチームでアイデアを考えていきます。こうして最終的なプロジェクトエンドには、何かしらの成果物が出されていることになります。

 図1を見てください。「これだけ情報があれば完璧な解を出せる」という情報量を仮に100としましょう。チームが集めた情報量のプロファイルは、図のようにプロジェクト経過とともに増加しますが、プロジェクト後半で必ず頭打ちになります。これは、チームの情報収集能力には限界があるからです。米国国防総省のデータベースのハッキングはできないし、検索方法にも個人の傾向があります。したがって実際には情報量は100に到達することができません。このチームが持つ情報が飽和した値の高さを「a」とします。

プロジェクトの開始から終了までの情報量の推移図1: プロジェクトの開始から終了までの情報量の推移
© Hideshi Hamaguchi

 僕がzibaで初めてプロジェクトに参加したときの話です。プロジェクトの初日のミーティングでいきなり「こんなアイデアがあるんだけど、どう思う?」と言ってみたのです。するとメンバーは異口同音に「まだ今日は初日だから、アイデアについてディスカッションするには早すぎる。まだリサーチも始まっていないのに」と言いました。数日経って、リサーチフェーズの中間ミーティングでまた聞いてみました。「今度はこんなアイデアがあるんだけど、みんなどう思う!?」

 またしても、全員が「まだリサーチは始まったばかりだよ」「インサイトの整理もできてないし」「アイデアの話をするにはまだ早い」と反応しました。

 この現象を図2で考えてみましょう。

情報量に基づく考え始めるタイミング図2: 情報量に基づく考え始めるタイミング
© Hideshi Hamaguchi

 彼らが言う「何かアイデアを考え始めるにはまずある程度の情報が必要」という高さを、先ほどの情報の飽和点「a」に対して「b」とします。つまり、考え始めるのは「b」に到達してから(時間軸では「c」)になります。情報量が「b」に到達していない状態、すなわち「c」より手前では答えを考え始めても意味がないと彼らは言っているのです。

いつ考え始めるのかわからない悪魔のチャート図3:いつ考え始めるのかわからない悪魔のチャート
© Hideshi Hamaguchi

 おそろしいのは、実際には誰も「a」と「b」の情報量を定義づけられないことです。プロジェクトを進めている間に、いつ「c」に到達するかも不明です。つまり、ほんとうは「a」、「b」、「c」がいずれもよくわからないチャートなのです(図3)。結局「いつから考え始めていいかがわからない」(つまり、アイデアが出されない)状態がしばらく続きます。それで僕はこれを「悪魔のチャート」と呼んでいます。

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