日本のスタートアップでも高額M&Aの萌芽が
鈴木規文氏(以下、敬称略):まずはお二人の自己紹介をお願いします。
太田賢司氏(以下、敬称略):コードミーの太田です。新卒で日本最大手の香料会社である高砂香料工業に入社し、その後約10年間、フレグランスの研究開発に携わりました。その知見を活かし、「香り×IT」で新しいライフスタイルを提案するスタートアップ「コードミー」を2017年に創業。2023年にエステーグループへ100%株式を売却し、グループインしました。
コードミーは、個人のストレス課題などといったデータに応じて、3,000以上のパターンからパーソナライズされた香りを調合し、自宅に届けるD2Cから事業をスタートしました。現在は、企業向けに「空間」を香りで演出する事業にも進出しています。
荒井邦彦氏(以下、敬称略):ストライクの荒井です。私は、最初は公認会計士として監査法人に勤め、当時にしては珍しく頻繁にM&Aをしているクライアントの担当をさせていただく機会に恵まれました。そして、目の前で大きなお金が動くのを見て「どうせビジネスをやるならこういう大きなことがしたい」と想いを抱くようになり、26年前にM&A仲介業で起業しました。それが今のストライクです。
鈴木:それでは、さっそくお二人に話を伺っていきます。まずは、日本におけるスタートアップのEXITの現状について。欧米では、スタートアップのEXITのほとんどはM&Aです。一方、日本ではIPOのほうが圧倒的に多い現状があります。
とはいえ、近年は国内でもスタートアップがM&AでEXITするという機運が高まっているように私は感じています。いかがでしょうか?
荒井:たしかに、M&Aによる高額なEXITを行うスタートアップが日本でも出てきました。しかし現状、日本のスタートアップに高い値段を張っているのは、主に米国や中国などの海外企業です。日本企業は他社で起こっているムーブメントや行動パターンを上手に真似る傾向があるため、もう少し時が経てば、海外企業に倣って同じような動きが増える可能性はあると思いますが。
ただ、国内に目を向けても、結構な金額を出す大企業が出てきています。たとえば三菱UFJ銀行は、Visaブランドのプリペイドカード「バンドルカード」などを提供するカンム社を2023年に買収しました。これは250億円のディールだったと言われています。正直驚きました。