影響力を持つ「ハブ人材」が組織に残り起爆剤となる
入山:
様々な場面で人と会うことが増えて、いろんな業界で「ハブ人材」が増えていることを実感します。IT業界ではオープンソース界隈に多く存在し、また、女性の働き方をカギに社外にネットワークを持つ人とか、地方に軸足を持って東京で活動している人とか、テーマもいろいろあります。
佐宗:
地域・地方活性化の請負人として話題になっているデザイナーの梅原真さんも、かつての「受注型デザイナー」の発想のままでは出てこないタイプだと思うんですよ。自分で地域を歩いて、行政はもちろん、地域の農業・漁業の人と直接会って仕事を進めている。
盛り上がっている地域では、コミュニティに世話人みたいな人がいるんですけど、彼らの話を聞いていると、まさにデザイン思考を意図せず素でやっているんですよね。コミュニティの色々な声に敏感に耳を傾けて、リソースをうまく活用してできる「新たな価値」を、仲間を巻き込みながら活動し創造しています。
以前仲間と一緒に訪れた軽井沢・塩沢村の「Hub軽井沢」では、五井野さんという方がいて、もともと単なる草むらだった場所をエコミュージアムという形でブランディングし直したという事例はまさに、ハブ人材がデザイン思考を実践しているように見えました。外国から嫁いで小布施で活躍するセーラ・マリ・カミングスさんみたいな例もあります。
入山:
確かにいろんな業界や地域でお見かけするようになりましたね。あと、これまで組織内のお作法に則らない「ハブ人材」って、どちらかというと以前は変わり者というか、主流ではなかったように思うんです。むしろ、組織を嫌って辞めてしまう人も少なくなかった。
でも、組織に残ることで出来ることもあるわけで、それを活用しない手はないと考える人が増えてきているように思います。あえて辞めずに組織内でも評価を得て、力を得ている人がイノベーションの起爆剤になりそうですね。
となると、いろんな業界のハブ人材を呼んで、話を聞いてみると面白いかもしれません。意外に業界のエバンジェリストとして社外で影響力を持つ人が、社内では組織人として粛々と仕事をしていたりするかもしれませんが(笑)。