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人工知能社会論からの考察

第5の科学である「AI駆動型科学」の誕生

第2部 第1回:人工知能による科学研究の加速

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 前回までは、AI社会論研究会の共同発起人である井上智洋氏による執筆により「AI時代において重要性を増す人文社会科学」についてお届けした。今回はそれに引き続き、私高橋がAIの活用として最も大きなインパクトをもたらすであろう「科学技術研究への応用」を紹介する。次回からもAI社会論研究会のメンバーである各部門の有識者が様々な角度からAI関連の話題が繰り広げられる予定だ。

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第4次産業革命の起爆剤は「AI駆動型科学」が本命である

 私は、「第5の科学:AI駆動型科学によるイノベーションの加速・自動化」が第4次産業革命の起爆剤となると考えている。

 AIに期待が高まる中で、日本のAI開発は、“周回遅れ”とも表現されているが、日本でもAI駆動型科学の発展を世界に先駆けることが出来れば状況が変わる可能性は十分にある。

 「第5の科学・AI駆動型科学」による科学の自動化が起こすイノベーションの連鎖は、産業革命を起こすほどのパワーをもっていると考えることができる。すなわち、AI駆動型科学こそが第4次産業革命(AI革命)つまり、今後の先進国の入れ替え戦を勝ち抜く鍵である。

 ノーベル経済学賞を受賞したロバート・ソローは「あらゆるところに情報技術が浸透しているが、生産性の統計にはその痕跡が見当たらない」と述べた。つまり第3次産業革命の中心的技術であったエレクトロニクスから現在までの情報技術では劇的な生産性の向上にはつながらなかったと述べている。

 ではAI駆動型科学の登場で一気に生産性が上がるのであろうか。本連載の共同執筆者である駒沢大学井上先生が提示したAI革命後の経済を説明した図(以下、図1と図2)を見ながら解説しよう。

農業経済から工業化経済への移行における生産性への影響と要因図1.農業経済から工業化経済への移行における生産性への影響と要因

AI革命後の経済における生産性に影響を与える要素図2. AI革命後の経済における生産性に影響を与える要素

 「科学技術がAIによって回っている」ことが表現されているのがわかるだろうか? 図1の「AI革命前の工業化経済」では、科学技術が生産活動に“部分的”に関わっていただけであった。図2の「AI革命後の経済」では、循環の中にいる主体が“研究者からAIにシフト”して、研究者は“サイクルを外から見守る”形をとっていることにも注目したい。

 これはまさに第5の科学・AI駆動型科学(AIを使って科学を回すこと)による科学の自動化が経済においても反映されていることに他ならないのではないだろうか。

 2030年以降、生産活動の主力が「機械」(AI・ロボット)のみであるような経済システムへ移行していくと言われている。このような新たな経済システムを「AI資本主義」と井上先生は本連載第一回目でも説明している。

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この記事の著者

高橋 恒一(タカハシ コウイチ)

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