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クリステンセン教授のジョブ理論から紐解く、ものづくり企業が発見すべき「顧客のジョブ」

Biz/Zine Day 2017 Summer 「IoTによるものづくり企業の生存戦略」 レポートvol.6

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ミルクシェイクの2つのジョブから考える「ニーズ」と「ジョブ」の違い

山田 竜也山田 竜也 氏(INDEE Japan 代表取締役トレーニングディレクター)
電気通信大学機械制御工学専攻 卒業。MIT Executive MOT 修了。NAL(現JAXA)にてカオス理論を研究。電通国際情報サービスにおいて黎明期の3D-CADシステムの普及に携わる。構造・振動・流体等の受託解析を手がける(小は電子部品の接点~大は船舶・土木)。製造業で設計業務の改革を進める中で、システムの限界を感じ、製品開発全体をテーマとしたiTiDコンサルティングの立ち上げに参画する。リスクマネジメント、ナレッジマネジメント、技術伝承、コストダウン等のプロジェクトを進める一方で、技術者や管理職を対象としたトレーニングプログラム、組織開発コンサルティングに軸足を移して行く。2011年インディージャパンを設立。事業開発、組織開発をテーマにコンサルタント、ファシリテーター(IAF認定 Certified Professional Facilitator)、トレーナーとして活動中。海外旅行好きで滞在国数は60カ国以上。

 ジョブ理論の話をしていると、「ニーズとジョブはどう違うのですか」という質問を受けることが多々あります、と山田氏。ジョブをより理解してもらうためにと、クリステンセン氏の定番事例となっているミルクシェイクの事例を挙げて、講演は続いた。

 「ニーズ」という言葉は、製品・サービスありきで使われることが多い。たとえば、新製品・サービスの企画会議などで、「その製品・サービスの「ニーズ」はあるのか」という文脈で使われます。これは、製品・サービス、企業が提供する「モノ・コト」が主語になっている。

 しかし、ジョブを探す際には、顧客がどんな状況にあるのか、何を解決したいのか、そもそもその人は何をしたいのか、と目的を探っていくことになる。つまり主語を「モノ・コト」から「ヒト」へ転換させる必要があるのだ。これが「製品軸」ではなく「ユーザー軸」でということとつながっている。

 抽象論をさけるために、クリステンセン氏がよく話す「ミルクシェイクはなぜ雇われるのか」という事例を参考に考えてみよう。

 商品であるミルクシェイクをどういう層に訴求していくか。デモグラフィックな観点で、年齢・性別・居住地などで対策を考えることは可能だ。こうした切り口でセグメンテーションした結果、ある層に対して売れていなかったら、その層が商品を知らないから売れないという仮説に基づき、アピールすべくもっと広告を打つといったアプローチだ。しかし、これでは無駄に広告費を投入することになりかねない。当たり前だが、「知られる=雇われる」ではないからだ。

タイトル

 そこで、そもそも、なぜミルクシェイクは雇われるのか、実際どのように買われているか、を観察し、インタビューしていくことで、2つの「ジョブ」が発見された。

 1つは「退屈な通勤のお供が欲しい」というジョブだ。店舗で実際に観察し、朝食の時間帯に車で通勤する人がミルクシェイクだけ買って出て行くことに着目し、彼らにインタビューすることで見えてきたのだ。状況を整理すると、以下のようになる。

 車での通勤時間が長く、小腹もすいてくる。しかも、毎日のことなので単に小腹が満たされるのでは物足りない。何かしら気を紛らわせるモノが欲しいのだ。何かよいものがないかと、現状の代替解決策を探っていくと、バナナだとすぐ食べ終わってしまうし、ベーグルやサンドイッチだと手がべたつくし、と不満足な点も見えてきた。要は、片手で持てて、手も汚れずに味もあってヒマが潰されるもので…、ミルクシェイクだ!ということになる。ジョブを理解し、より退屈を解消できるように、フルーツ等を加えてフレーバーを工夫することで売り上げを伸ばせた。

 そして、このジョブの発生には、年齢・性別・収入といったデモグラフィック的な属性は関係なく、長く退屈な通勤という状況がジョブを発生させていることになる。

 もう1つは「子供を愛する親であることを感じたい」というジョブだ。幼稚園児ぐらいの子供の親なら誰でも経験したことがあるのではないだろうか。ぐずる子供の前でもガミガミせずに、子供を愛する優しい親であることを感じたい…と。こうした時に手軽に雇える解決策がミルクシェイクだった。

 しかし、親にとってミルクシェイクをたくさん飲ませるのは抵抗がある。今は大人しくなっても夕ご飯を食べなくなったら困るし、そもそも大人用のミルクシェイクは量が多すぎるし、飲むのに時間もかかる。

 そこで、サイズを小さくし、ストローを太くしてすぐ飲み終わるようにして子供用のミルクシェイクにしたところ。売り上げが上がったのだ。親にとっては、子供が落ち着きさえすれば、ミルクシェイクはたくさん飲ませたくないし、早く飲み終わってほしいということだ。

 ミルクシェイクだけを見て考えていたら、より甘くしたら?美味しくしたら?健康にしたら?と、中身のスペックばかりが気になってしまう。ミルクシェイクを雇う顧客の行動に目を向けたジョブから考えると、実は全然違う要因で雇われていることに気付くことができる。

 「ミルクシェイク」の話は、容器の中身であるミルクシェイクそのものではなく、顧客のジョブに合わせたフレーバーやパッケージ、サイズ等の改良により売り上げが伸びた例である。

 自社の製品のメインのスペックを向上することばかり考えていて、パッケージや売り方で競合に負けてしまっている。もしくは、そうわかりつつも、他の選択肢を選べずにいる。そんな企業にこそ深く考えて欲しい事例ですと山田氏は語った。

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顧客の状況をとらえられないと、モノが買われる理由はわからない

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