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新規事業戦略で必用なストーリー、インサイド・アウトの発想、ゴールの設定

第六回

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新規事業戦略で心がけること

ストーリーとして描くこと

新規事業の進め方やお客様へのアプローチ、事業展開といった戦略を「ストーリー」として描き、そこに足りない情報を補うという視点が必要です。経営企画や現場の事業に携わる人たちは、とかく分析をしたがる傾向にあります。しかし、これから新しい事業を始めようと言うときには、それとは逆に事業の全体を総合的に捉え、それを時間軸に沿ってどのように実現してゆくかのストーリーとして捉える視点を持つ必要があります。そして、そのストーリーを描くのに必要な情報を調査し、そのストーリーを手直ししつつ補強するといった態度が必要です。
そのストーリーに沿って新規事業をすすめてゆく過程では、様々な出来事が起こりますが、そこでは分析的態度を発揮して、うまくいったことや改善すべき点を冷静に捉え、ストーリーを修正してゆくことが必要です。
戦略は総合的な視点でストーリーとして描き、実践は分析的な視点で改善を積み上げることが成功のためには欠かせません。

インサイド・アウトで考えること

「世の中はこうなるだろう」という予測に基づいて戦略を決定するのではなく、「世の中をこうしたい」や「お客様をこうしたい」という自分たちの意思に基づいて戦略を決定することです。
前節の「ストーリーを描く」とき、世の中のことを分析的に捉え、世の中がこうなるからそれに合わせて、こうしようというアウトサイド・インの発想では、どうしてもユニークな発想は生まれず、明確な差別化を生みだすことはできません。むしろ、積極的に理想や夢を描き、自分たちが思い描くあるべき姿をどうすれば実現できるかといったインサイド・アウトの発想を持つことで、魅力的な新規事業を描いてみるべきでしょう。
もちろん、単なる一方的な思い込みだけであるべき姿を描くのではなく、先に述べた現場の課題を実感することから発想しなければならなりません。つまり、その課題を対処療法的に解決しようとするのではなく、その課題の根本にある事実を突き詰め、その課題を含む全体の仕事の流れや仕組みを含め、大きなストーリーとして、自分たちの目指すあるべき姿を描くことです。
「世の中はこうなるだろう」を参考にしつつも、「世の中をこうしたい」という積極的な視点を持つことこそ、魅力的な戦略を生みだすことにつながります。

「何をしないか」を決めること

「何をするか」ではなく「何をしないか」を決定することで、競合他社との違いを作る事が大切です。競争優位を築こうとするとき、他社と自社とで、どちらがより優れているかで違いを示すやり方と、優劣のつけられない本質的な違いを示すやり方があります。

例えば、前者は、価格や大きさなど数値的尺度で測れるもので「量的な差別化」です。後者はデザインやアプローチする市場などで差異化する「質的な差別化」です。新規事業では、後者を重視しなければなりません。それを考える時、「何をするか」ではなく、「何をしないか」を考えることが重要になります。

それは事業には常に資金や人材、スキルなどの制約がつきまとうからです。それを無視することはできません。だから、できるだけ多くのことを「何でもやろう」と考えるのではなく、ターゲットとする顧客や市場の現実的なニーズを見極め、質的な差別化を実現できることに絞り込んで、積極的に「何をやらないか」を決めることです。そうすれば、自ずと「何をやるか」が決まります。
できることは何でもやるでは資源も足りず、スピードも担保できません。まずは、本質的な差異を生みだすためにやるべきことを絞り込み、「何をやらないか」を決めて、いち早く市場へ投入することです。そして、必要に応じて徐々にやることを増やしてゆくことが大切です。

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斎藤昌義(サイトウマサヨシ)

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