サッカーワールドカップにみる、リーダーと組織のタイプ──賢者風リーダーと愚者風リーダーの組織では何が違うのか?
──長尾さんは完璧なリーダー(賢者風賢者)ではない人でもできるリーダーシップのあり方として「愚者風リーダーシップ」を提唱していますが、愚者風リーダーがいる組織というのは、具体的にはどんなものですか?
長尾:今年はワールドカップがあったのでサッカーの例で説明しましょう。
例えばアルゼンチンはメッシ選手が賢者風賢者ですから、他の選手が「メッシさん、どうにかしてください」とパスを出すんですね。でも、彼がFCバルセロナで輝けていたのは、チームのみんながリーダーで、メッシはシュートを打つ係だからなんです。アルゼンチンだと「メッシさん、お願いします」とメッシ依存、リーダー依存を起こしちゃう。
会社でも、◯◯長という役職の人に「課長なんだから、部長なんだから、ちゃんとしてもらわないと困る」と周りが依存することが、ありますよね。
逆にアイスランドなんかは、2008年頃から国をあげて始めた育成が効いて、いい感じのチームになっています。飛び抜けた才能を持つ選手はいないけれど、そこを組織力でカバーする。サポーターとも一体になっています。「バイキング・クラップ」というのが有名になりましたけど、あれは「ここで、励ましてくれ!」という時に選手の方からサポーターに要求するんですよ。どっちがリーダーでどっちがフォロワーかという境目がほとんどないんです。
仲山進也氏(楽天株式会社 楽天大学 学長、以下敬称略):日本代表の話でいくと、トルシエ監督は答えを教えて「こうしなさい」と型にはめようとするタイプでした。ハリルホジッチ監督は「こうしろ」とは言わず、とにかくずっとかき混ぜ続けます。「俺たち弱いから、世界に勝つためには速攻だ」くらいしか言わず、「あとは自分たちで考えてやれ!」と。そして、メンバーをどんどん入れ替えて競争させ、生き残ったやつが強い、という感じでした。メンバーは、ずっとモヤモヤしたままやらされている感を持っているように見えました。