デンソーグループの人事的な課題と長期方針
従来のビジネスモデルでは戦えなくなってきており、このままでは将来の成長は見込めないという話を業界関係者と最近よくしています。
株式会社デンソー人事部担当係長の吉田幸司氏は、デンソーを含む自動車業界の現状を指し、そう話した。デンソー社内では、従来のハード領域中心から、ソフト領域にも注力していく必要性が議論されていた。
こうした背景を踏まえて、デンソーは2017年10月、長期的な指針として「デンソーグループ2030年長期方針」、その変革の道筋として「デンソーグループ2025年長期構想」を掲げた。
デンソーは、“環境にやさしい”“交通事故を無くす”といった車の従来価値に関するミッションに加え、“コネクティッド”“自動化”“シェアリング”“電動化”といったモビリティ社会のパラダイムシフトへの対応が必要になっている。こうした中で「デンソーグループ2030年長期方針」を掲げ、従来の環境・安心という価値の拡大に加え、社会からの共感を得られる新たな価値創造を目指すことにしたのだ。
2030年に向けたマイルストーンとして、「デンソーグループ2025年長期構想」が掲げられている。その中に、人事の課題として「組織能力をいかに高めるか」というものがあった。
「組織としてのスピードと、現場の活力をいかに高め、激動の時代を闘える集団へと変革するということが経営戦略の一つとして掲げられました。人事部として、いかにこの戦略に資することができるかが目下の課題でした」と吉田氏は話す。
人材リソースをいかに有効に活用していくか
吉田氏は「お恥ずかしい話ですが、人事部はグループ含め全世界に約17万人いる社員のうち、どこにどんな強みを持った人材がいるかを把握できていませんでした。さらには、株式会社デンソー本体の社員すらも、人事は細かく把握できていませんでした。もちろん部門長は、自分の部下の専門性やキャリアについて把握していますが、それを経営レベルで把握できていなかったのです。人事では“適材適所”という用語をよく使いますが、それが本当にできているのか、タイムリーにできているのかが課題でした」と語る。
そこで吉田氏は人事部として、デンソーの技術者が個人としての市場価値や競争力を高めていける組織づくりに取り組むことしたという。