なぜ人事の働き方改革を優先すべきなのか
近年、企業の大きな課題のひとつに「働き方改革」があります。法改正もあり、本格的に「働き方改革」に取り組まなければならない状況ではありますが、日本企業における実態はどのようなものでしょうか。
少し前になりますが、我々は昨年の1月に、人事部門や働き方改革に関わる部門に所属している方500名を対象に「働き方改革に関する意識アンケート」を実施しました。この調査から見えてきた結果として、人事部門は通常業務に忙殺されており、注力すべき働き方改革を進められていないことが分かりました。調査から1年以上経っており、法改正にあわせて働き方改革を形作った企業も多いかもしれません。そこから企業の成長と両立できる真の働き方改革に向けて整えていくべきではないでしょうか。
私は、人事部門の働き方改革をしなければ、企業の働き方改革は継続しないと考えています。そのため、まずは人事部門の働き方を変え、働き方改革に取り組む時間を捻出することを提案しています。そうすることで、人事部門主導の生産性向上、労働環境改善、人事制度整備を進めることができます。
人事部門は、労務管理や給与計算など多くの定型業務を抱えています。そのため、RPAや人事システムの導入、作業のアウトソーシング化によってかなりの業務削減が可能です。人事部門はコストセンターだからと後回しにされがちですが、企業全体で考えると、制度を作る人事部門にもしっかりと投資をするべきなのです。
業務削減によって時間が捻出できると、生産性向上や労働環境の改善、人事制度の整備に着手することができます。国の定める働き方改革を実現しつつ、企業の収益を高めるためにも、従業員のポテンシャルを最大限引き出すことが求められます。そこで人事部門の取り組みとして重要になってくるのが、「タレントマネジメント」です。
タレントマネジメントとは、従業員が持つスキルなどの情報を人事部門で管理し、全社的な戦略に沿った最適な人材配置や育成を行うことです。もっとも、タレントマネジメントの考え方自体は新しいものではなく、以前から取り入れている企業は多くありました。ITの発達によって従業員を多く抱える大企業でもタレントマネジメントが可能なシステムが出てきたことに加え、働き方改革のために従業員の実態を把握する必要が生じたことで、タレントマネジメントの重要性が増してきているのです。