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ザッポス流セルフ・オーガニゼーション

ザッポス流「セルフ・オーガニゼーション」──自由のための「アカウンタビリティのトライアングル」とは?

ザッポス流「セルフ・オーガニゼーション」:前編

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ザッポスの歩みを追って

 米国のネット通販会社ザッポスのホラクラシーへの取り組みは、これまでに日米の多くのビジネス・メディアに取り上げられている。私がザッポスCEOのトニー・シェイと出会ったのは今から11年前の2008年の春だが、「企業文化を育めば成果は後からついてくる」という哲学に基づくカルチャー・ファーストの徹底的な実践をまさしく「革新的」と感じた。

 当時、ザッポスの本社はラスベガス郊外のヘンダーソンという町にあったのだが、そのキャンパスに何度も足を運び、CEOのトニー・シェイをはじめ、彼を取り巻く重鎮たち、そしてザッポスの心臓部であるCLT(コンタクトセンター)で働く社員さんなど100人をゆうに超えるザッポニアン(ザッポス社員のこと)をインタビューして「アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略」としてまとめたのが拙著『ザッポスの奇跡』である。

 2008年の出会い以来、トニー・シェイとは対話を続けてきた。「インタビュー」という形で最後に会ったのは2013年のことだ。リクルーターとしてザッポスの「カルチャー・フィット(文化適性)採用」の仕組みを築き上げ、現在では教育事業部を取り仕切っているクリスタ・フォーリー氏と共にインタビューに応じてくれたが、その時、トニーは「会社のコア・バリューの創成に携わらなかった人たちが社内でマジョリティを占める中で『ザッポス文化』を継承していくことの難しさ」について語っていた。

 後でわかったことだが、その時、トニーはもう既に「ホラクラシー」導入に向けて着実にステップを進めていたのだ。トニーがホラクラシーの開発提唱者であるブライアン・ロバートソンに出会ったのが2012年の10月。「パイロット・プログラム」として人事部に限りホラクラシーの試験導入を開始したのが2013年の4月。同年の9月にはラスベガスのダウンタウンの新社屋に入居したが、それとほぼ同時に全社員に向けてホラクラシー導入の方針を正式に発表した。

 初めてそのニュースを聞いた時には、「ザッポスのカルチャーはどうなるの?」と危ぶむ気持ちが私にも少なからずあった。2015年3月にトニー・シェイが「ホラクラシーへのコミットメント」を全社員に迫った結果、約半年分の給料にあたる「自主退職ボーナス」と引き換えに社員の30%近くが流出したが、猜疑や批判が渦巻く中、私はトニー・シェイの尋常でない覚悟と気迫を感じ、彼は会社「組織」の在り方を根底から変えるとてつもなく大きなことをやろうとしているのだという印象を受けた。

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この記事の著者

石塚しのぶ(イシヅカ シノブ)

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