DX/AI推進の実態と、競争力を創出するための必要要素
日本における労働生産性の低下、そして少子高齢化にともなう労働力不足といった課題に際し、競争力を高める方策としてDXが注目され、多くの企業で強力に推進されつつある。しかし、必ずしも順調に推進できているというわけではないようだ。
マクニカのAI事業のコンサルティング・プロジェクトマネジメントに従事している平原氏は、2020年12月に発行された経済産業省の「DXレポート2(中間取りまとめ)」を挙げ、2018年発行のDXレポートから2年が経過したにも関わらず、「95%の企業はDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階には至っていない」という現状を紹介。さらに先行企業と平均的な企業のDX推進状況には大きな差があると話した。
DXの認知・理解が進んでいない「DX未着手企業」から、DXを進める意識はあるが、散発的な実施にとどまっている「DX途上企業」へと歩を進め、その先に目指すのは、DXによる事業変革の体制が整い、環境変化に迅速に対応できる「デジタル企業」だ。しかし、その間には大きな壁があり、レガシー企業文化からの脱却を困難にしているという。その壁とは、
- DX戦略の策定
- DX推進体制の整備
- DX人材の確保
の3つだ。
その壁を越えて、「デジタル企業」になると、どのようなことが可能になるのか。平原氏は、米国の大手小売企業の事例を紹介した。カメラ付きロボットが棚の画像をリアルタイムで撮影し、AIがその画像を解析して、棚陳列商品の在庫を自動算出。さらにアプリに結果が即時反映され、欠品状況などがリアルタイムで配信されると同時に、需要予測AIにデータを共有し、サプライチェーンの最適化に活用するという。
平原氏は「DXによる変革の目的は、『顧客に新しい価値を提供する』、『サプライチェーン全体を連動させて最適化する』といった全体的なものであり、決して局所的にデジタル化するという意味ではない」と述べ、「これからの時代、DXで競争力を創出するにあたり、不可欠になるのがデータとAIだ。これからDXが進んで業務のデジタル化が進むことで、データが生まれて蓄積される。データドリブンな施策を実施できるようになれば、AIを開発・利用することでまた新しいデータが生まれる。その競争力を生み出していくループを如何に作るかがカギとなる」と語った。
そして、そのループの実現に欠かせないのが、先述の「DX戦略の策定」「DX推進体制の整備」「DX人材の確保」だ。先の2つについては進みつつあるものの、「DX人材の確保」が十分にできていないためにボトルネックになっているというわけだ。