10年後の柱を目指した「健全な利益の追求」
畠山和也氏(以下、敬称略):日本の人口が減り、どの業界もシビアな変革を迫られている中、証券会社は比較的先行きが悪くない数少ない業界だと思います。その中で、大和証券グループがFintertechのような野心的な事業に取り組むことができたのは、なぜなのでしょうか。
相原一也氏(以下、敬称略):最近の大和証券グループは、伝統的証券ビジネスとそれ以外のビジネスの「ハイブリッド型総合証券グループ」を標榜しています。経営陣が“出島”によるハイブリッドビジネスの創出を検討する中で、Fintertech立ち上げの話が出てきました。奇しくも大和証券グループにとって1号案件のような形で始動したわけです。
もちろんFintertechのみを試験的に動かしているわけではなく、農業に投資をする大和フード&アグリや、スマホ証券のサービスを提供しているCONNECT、不動産投資商品を扱う大和証券リアルティも立ち上がっています。
畠山:かなり積極的に新規事業を進めているんですね。
相原:「この出島では10年後の柱になるようなビジネスを作り上げてくれ」と託されています。
畠山:あらためて、堅いイメージのある大和証券グループが、Fintertechが手掛けているような新規事業を認めていると思うと不思議でなりません。
相原:グループとして「健全な利益の確保」を大きく掲げているので、「際どいけど儲かる」ビジネスには手を出していません。それが堅実なイメージにつながっていると思います。
もちろん、私たちも「健全な利益の確保」には強く共感しているので、だからこそ新しい事業は、外の方の力も借りながら一つひとつ説明して、丁寧に進めてきました。仮に企画部門から好感触を得たとしても、管理部門にも理解、納得をいただかないといけません。別会社とはいっても、グループ会社として管理される立場にあるので、リスクマネジメントやコンプライアンスに関しては、通常の倍くらい丁寧に説明することを心がけていました。
大島卓也氏(以下、敬称略):出島だからといって、何でも許されるわけではありません。むしろ出島だからこそ、ロジックを組み立てて説明することを心がけてきました。
畠山:熱量を持ってロジックを組み立てられる力は大切ですよね。野武士のように「勢いでつっこめ!」となってもうまくいきませんし、知識偏重でもうまくいきません。お二人のような足を動かせるロジカルな人たちがいることが、成功への第一歩だと思います。
相原:新規事業といっても、情熱だけでは稟議を通せないですよね。ベンチャー企業であれば、自分の感性に合う投資家を見つけるまでトライできます。それが大変だということは十分承知していますが、一方で大企業の場合は一ヵ所失敗したらアウトです。だから、頭と足を使って、相手が飲み込めるように説明していく必要があります。
大島:もちろんやってみなきゃわからない部分もあります。しかし仮説がなければ、本当に“結果”が出たのかどうかわからないですよね。どの数字が想定と違ったのかを分析できるからこそ、PDCAのサイクルが回せると考えています。