DX推進スキル標準のWGの各委員が込めた、名称やロールへの思い
NTTデータ経営研究所 執行役員 エグゼクティブコンサルタントの三谷慶一郎氏(経済産業省「デジタル時代の人材政策に関する検討会」座長)をモデレーターに、DX推進スキル標準を策定した有識者委員(下図)が、パネルディスカッションに登壇した。
パネルディスカッション冒頭、各ワーキンググループの主査や委員から、策定までの議論でポイントとなった点などが紹介された。
白坂氏によれば、アーキテクトとは「与えられた目的に対して既存の手段を集めて、その目的や課題を解決する仕組みを設計する人材」だったという。
ただしDXが求められる現在では、「今までできなかったようなこと(目的)を、新たに生まれるデジタルテクノロジーを統合し実現する、課題解決の仕組みを考えるのがアーキテクトではないか」とし、アーキテクトの意味合いが変わっていることから、ビジネスアーキテクトという名称にすることが妥当だという前提でWGでの議論が始まったという。
同じビジネスアーキテクトWG委員の三枝幸夫氏も白坂氏に同意しつつ、新しいテクノロジーを活用することで新しい価値を創出するのがビジネスアーキテクトのロールやスキルを策定する議論の前提だったと語る。
デザイナー検討ワーキンググループ主査の長谷川敦士氏は、デザインWGでは最終的に3つのロール(「サービスデザイナー」「UX/UIデザイナー」「グラフィックデザイナー」)に集約したが、3つのロールの中でも、特に企業規模の大きな組織や大型プロジェクトなどで、新しい事業価値を創出する際に必要となる「サービスデザイナー」の存在を強調した。
データサイエンティスト検討ワーキンググループ主査の佐伯諭氏からは、人材類型に関してはデータサイエンティスト協会の「データサイエンティストの定義」と同等のスキルセットを設定したうえで、誰がDXをマネジメントするのかという点が議論になった、と語る。多くの企業でデータ分析プロジェクトが進行する中で、どの人材類型がプロジェクトをリードするのか。まだまだ結論が出ていないテーマだとした。
ソフトウェアエンジニア検討ワーキンググループ主査の羽生田栄一氏は、ソフトウェアファーストの時代の中核的なロールとして、この4つを定義したと述べた。
サイバーセキュリティ検討ワーキンググループ主査の武智洋氏は、もともとは職種名である「サイバーセキュリティスペシャリスト」というWG名称だったが、それを「サイバーセキュリティ」という領域名にした、と述べた。「セキュリティは専門家に任せるもの」というイメージがあり、セキュリティはどの人材類型も意識しなければいけないものだというメッセージから「スペシャリスト」という言葉を削除したのだという。そのうえで、セキュリティの全体方針を考えるマネージャーと実務にあたるエンジニアの2つにロールを集約した。
内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は、「サイバーセキュリティ戦略」を2021年に発表。そこでは「プラス・セキュリティ知識」の重要性が述べられている。これは、経営層や経営企画部門など、IT・セキュリティの専門ではない部署においても、サイバーセキュリティリスクを認識し、自律的に対策を実施することを求めたものだ。