「計画的人材流動性」を実現する一気通貫の人事施策
後藤宗明氏(以下、敬称略):会社がじわじわと変わっていくために一定の流動性を保つ「計画的人材流動性」というのは、確かにシンプルな考え方ですが、難しそうですね。
曽和利光氏(以下、敬称略):「言うは易し行うは難し」ですね。リクルートって結構居心地の良い会社でもあるので、会社が嫌になって辞める人はほとんどいないと思うんですよ。「いい会社だったからもっといたかったけれど、ちょっと別のことをやってみたくなっちゃったので辞めます」という人が多いんです。
そういう状態をどう自然に作り出すかということですが、採用、育成、評価、報酬、配置、退社まで、一気通貫でいろいろ工夫しないといけません。
例えば採用においては、将来どんな人が必要になるか分からないので、求める人物像は2つしかないんです。「自律的に動くこと」「何かの領域において程度が甚だしいこと」だけだったんですよ。何かがすごければ、その領域が必要となったときに一番になれますから。とにかくいろんな人を入れておこう、という考え方でしたね。それから「潔いやつを採れ」というのもありました。「自分がこの会社に合わないと思ったら、さっさと辞めていくような人を採れ」ということです。
育成に関しても、自社の今の仕事に最適化するような育成体系があるかというと、全然そんなことはありませんでした。RBC(リクルートビジネスカレッジ)という、どこでも通用するような、いろんなことを学べるプログラムはありました。いわゆるコーポレート・ユニバーシティのさきがけみたいなものですね。私がやっていたのは20年前ですが、第1回目講演を大前研一さん、第2回目は堀紘一さんにお願いして、楠木建先生にはイノベーション講座を作ってもらうなど、それが今の事業にどう役立つかは分からなくても、結構お金を掛けてやってました。
他にも「リクルートの中で偉くても意味なかったりして」というポスターを作ったりするなど、リクルートの中で必要なスキルではなくポータブルスキルを身につけておかないと、どこにも行けないようなやつになるぞ、というメッセージを伝えていました。
配置も、意外な異動をしょっちゅうやっていましたね。営業の責任者だった人材が法務部に異動することや、住宅情報を扱っていた人材がいきなり人材関連情報を扱うメディアへの異動もありましたね。できない仕事をやらせることが成長につながるという考えで、特に優秀な人ほど意図的にローテーションをさせていました。