経営企画とITやHR、事業開発などの広範な機能を集約するポーラ・オルビス
中垣徹二郎氏(以下、敬称略):本日のゲストは、ポーラ・オルビスホールディングスの取締役であり、新規事業開発やCVCの担当役員である小川浩二さんです。
小川さんはポーラ・オルビスの複数の部門を統括するとともに、新規事業開発やCVC「POLA ORBIS CAPITAL」も取り仕切っています。以前、私が所属していたVCがファンドを設立した際にも、小川さんが窓口になってLP出資をしていただきました。まさに、ポーラ・オルビスを縦横無尽に繋げるキーパーソンの一人です。まず印象的なのが小川さんの担当領域の広範さです。最初に担当領域をご紹介いただけますか。
小川浩二氏(以下、敬称略):担当領域としては、総合企画、IT、HR、事業開発の4つです。総合企画ではグループ全体の経営企画と経営管理を担当し、このなかでCVCの活動を行っています。先ほど、中垣さんが話されたLP出資も、この部門の担当役員としての仕事です。
ITではポーラ・オルビスグループの情報システム全体を統括しています。以前は、グループ各社に情報システム部門を設置していましたが、デジタル化が急速に進む中でグループの競争力を高めることと経営資源の効率化を目的にホールディングスへの集約を進めました。現在は、ホールディングスのIT部門がグループ全体の情報システムの開発運用管理やグループのDX支援を手がけています。
ホールディングスのHR部門では、経営人材パイプラインの為の戦略や人材管理などを担当しています。
そして、事業開発では新規事業開発などを手がけているのですが、これはもともと総合企画の一チームでした。ポーラ・オルビスグループの事業ポートフォリオにおいて新規事業の重要度が高まるなかで、2021年に専任部門として分離独立することになりました。
中垣:これほど広い領域を一人の役員が担当するケースはそれほど多くないかと思いますが、ご自身の立場をどのように捉えてらっしゃいますか。
小川:変革が経営活動で常に求められているということは言うまでもありませんが、経営資源を集約して動かすことにはメリットが多いと考えています。もちろん、経営陣や取締役会のガバナンスを前提としてですが、縦割りを打破して、グループ内でのコミュニケーションコストを削減するためには有効ではないかと。実際に、意思決定のスピードについては効果を感じています。部門間の調整や根回しに力を割きすぎることなく、シンプルに意思決定が行えるのは大きな利点です。
中垣:どのような経緯で現在の組織体制が出来上がったのでしょう。何かきっかけになる出来事はありましたか。
小川:2006年のホールディングスの設立と持株会社制への移行は、一つの転機だったと思います。従来は、中核企業の株式会社ポーラが創業事業ということもあってグループの中心にある体制だったところ、ホールディングスを親会社とする体制に移行して、子会社となるグループ各社は「自主自立」でブランド価値の向上を進めるようになりました。
その後、2010年に東証一部上場を果たし、自主自立の方針は一定の成果を得ました。その一方で、自主自立だけのグループ経営はサイロ化のリスクと背中合わせです。経営のあらゆる領域を子会社に一任していては、ホールディングスは単なる管理会社になってしまいます。今後、ポーラ・オルビスがさらなる発展を遂げるには、経営資源の適性配分や効率化が必要です。こうした役割をホールディングスが担えるよう経営機能の集約を進めてきた経緯があります。
中垣:サイロ化の解消もそうですが、経営資源の効率化もホールディングス制のメリットの一つですからね。ということは、小川さんが担当されている領域以外でも集約化は進んでいるわけですか。
小川:はい。2023年からは財務経理部門や海外事業部門の集約に着手しました。特に、海外事業の進出や販路開拓は、グループ会社単体の企業体力だけに頼っていてはなかなか難しい面があります。そのためにも、グループの組織力を生かして海外事業を推進できる体制は今後ますます必要になると思っています。