研究に裏付けられた「エフェクチュエーション」理論に勇気を得た
──まずは大長さんのこれまでの取り組みと、エフェクチュエーションとの出会いについてお聞かせください。
大長伸行氏(以下、敬称略):企業における新規事業の創出とイノベーション組織づくりを支援する中で、3年ほど前から個人の行動原則に注目してきました。というのも、経営者が考える新規事業の阻害要因は「従業員の能力不足」だというデータをよく見ます。だとしたら、その「能力」ってなんなのか。そんなことを深掘りし始めたんです。
その際に見つけた重要な観点が、既存事業と新規事業とで異なる行動原則を使い分けるということです。既存事業においては、客観的なデータやロジックに基づき、ベストを尽くして計画通り達成するというような「戦略思考」が必要です。一方で新規事業は、個人の主観や直感を大切にして実験を繰り返し、反応がなければ「脈ナシ」と結論を出せる考え方が必要です。これを僕らは「実験思考」という言葉でお客さんに説明してきました。
ですが、相手が大企業であったり大きなプロジェクトであったりすると、どうしても「どんな根拠があって言ってるの?」といったことを問われるんですよね。「とりあえず手を動かしましょう」では通じないと感じていたときに吉田先生の『エフェクチュエーション』を読み、まさにこれだと思いました。僕らが言ってきたことがより具体的に書かれていて、しかも研究として論理的に分析されている。「やっぱりこの方法でやっていけそうだ」と感じたんです。
吉田満梨氏(以下、敬称略):興味深いです。大長さんは以前、デザインファームにいらっしゃったんですね。ということは、実験思考やエフェクチュエーションのプロセスを自ら経験されてこられたのでしょう。でも、それを大企業の支援に活かそうとしたときに、ハードルがあったんですね。
大長:そうなんです。実はデザインファームにいたときも、「どのようにすれば、大企業にスタートアップのような事業の作り方ができるか?」という問いがあって、それが「bridge」の創業につながりました。
吉田:なるほど、だからサービスのキーワードが「自走」なんですね。