なぜ「デザイン思考×ビッグデータ」なのか
「デザイン思考」と「ビッグデータ」
前者を「定性的」「右脳的」「クリエイティブ」なデザイナーが使うモノ、後者を「定量的」「左脳的」「ロジカル」なデータサイエンティストが使うモノと、それぞれ別モノと切り分けて区別してはいないだろうか。
このような表面上の理解でモノゴトを分類し整理するだけでは、「イノベーションの時代」を乗り越えていくことは難しい。それぞれの本質を捉え、異分野知識を総合的に運用していくことが必要なのである。
本連載タイトル「デザイン思考×ビッグデータ」は、単純に 「右脳×左脳」、「ロジカル・シンキング×クリエイティブ・シンキング」、「定性×定量」、「フィールドワーク×データサイエンス」などを意味しているのではない。
この2つの言葉は、対立概念ではない。レベルが異なるものなので不揃い感があるが、あえてこれらの言葉をかけている。イノベーションは、これまでにないものを組み合わせる新結合と定義されるように、「デザイン思考」と「ビッグデータ」という一見異質な2つをかけ合わせた先に見えてくることがあるからである。
デザインはデザイナーに任せておくには重要すぎる
デザイン思考を提唱し世界に広めた、IDEO社CEOティム・ブラウンの著書[1]に繰り返し出てくる言葉だ。自分がデザイナーだと自覚したこともない人々も含めて、誰もがデザイナーのスキルを身に付けることが、デザイン思考の目的であることを忘れてはならない。ビッグデータの分析者にとっても、それを活用するビジネスリーダーにとっても、デザイン思考の考え方は必要なのである。
次頁では、この見解を裏付けるために、筆者の事例を企業名は伏せたうえで紹介したい。