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世界のイントラプレナーの共通認識としてある「組織変革」や「組織文化」の重要性

「イントラプレナーシップ・カンファレンス2016」のエッセンス Vol.1

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 2016年11月、世界中から企業イノベーションの担い手たちが集結する「イントラプレナーシップ・カンファレンス」が米国シリコンバレーで開催された。欧州に始まり、すでに30か国以上に広がる企業イノベーションのグローバルプラットフォームでは何が語られているのか。昨年に続き、唯一の日本人として参加した株式会社biotope小林泰紘氏が、「イノベーションを持続的に生み出し続けるために求められる視点転換」をテーマに、個人や組織が企業イノベーションを加速させていくための最先端の実践知をお伝えする。第1回の今回は、カンファレンスで語られた世界のイントラプレナーの共通認識を、Adobe社の「Kickboxプロジェクト」の事例から考察する。

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コラム執筆者紹介:小林 泰紘(株式会社biotope)

Creative Catalyst / Intrapreneurship Enabler
世界26ヶ国を旅した後、株式会社Impact HUB Tokyo 創業メンバーとして、社会的事業を行う起業家支援に従事。その後、顧客中心デザインをベースとしたビジネスコンサルティングファームにて、金融、人材、製造など幅広い業界の大手企業の事業開発やデジタルマーケティング支援、顧客体験(UX)デザインを手掛けた。現在は共創型デザインファームbiotopeにて、企業のR&Dや新規事業開発、未来ビジョン策定を支援する他、クリエイティブな組織への変革支援やイントラプレナーシップ醸成プログラムの企画・開発支援などにも携わる。社内外を巻き込んだ共創型イノベーションプロジェクトのファシリテートや事業創造型人財の育成を軸に、企業の事業創造・組織づくりを伴走する。東京大学経済学部卒。通訳案内士。

多くの企業がその重要性に気付き始めている「イントラプレナー」

 2007年にケニアでスタートした「M-Pesa」というモバイルペイメント事業がある。ひとりの社員が、当初は誰からも相手にされなかったこのアイデアの必要性を訴え、組織を説得し、仲間とともに事業として世に送り出した。そして、銀行口座を持たない1000万人以上の生活を向上させ、Vodafoneに新たな顧客市場と莫大な収益をもたらした。

 既存製品の常識を覆し、年間数十億ドルを稼ぐヒット商品となった「オールウェイズ・ウルトラ」という生理用ナプキン事業がある。ひとりの男性社員が、より多くの女性の快適な生活を願う一心で、社内の反発に合いながら、そして一時は解雇寸前にまで追い込まれながらも諦めずに事業化にこぎつけたという。

 イノベーションと呼ばれる革新の背景には、志や情熱を持って数々の困難に果敢に挑戦し、企業のリソースを活用しながらビジネスや事業に新たな方向性を示した変革の騎手達がいる。イントラプレナー(企業内アントレプレナー)と呼ばれる人たちだ。

 だが、組織に属するイントラプレナーは、ホワイトキャンバスにゼロから描き始める起業家ではない。自らのビジョンや情熱をカタチにし、インパクトを持って世に価値を送り出していくためには、組織のシガラミをくぐり抜けながら、部門を超えて周囲の人々を巻き込み、リソースを獲得し、泥臭く組織を動かしていくことが求められる。

 そうした変革の騎手達を支援するため、現在私は、共創型デザインファームbiotopeに参画し、多岐にわたる業界、さまざまな企業でのR&Dや事業開発、部門横断型の組織デザインに携わっている。イントラプレナーシップ醸成プログラムの開発なども手掛けているが、イントラプレナーシップは企業が将来の成長機会を創造していく戦略的ドライバーとして、そして個人が企業のリソースを活用しながら自分らしい価値創造を社会にもたらしていく働き方(生き方)として大きな役割を果たしている。そして、多くの企業がその重要性に気付き始めている。

 だが、そうした組織の新たな未来を描く個人が活躍する変革の場を、どのようにデザインし、組織全体としてのインパクトを高めていくのか。そしてイントラプレナー自身は、多くの機能や制度が既存事業の実行に最適化された組織の免疫機能をどのように乗り越えていくのか。

 本連載で取り上げるイントラプレナーシップ・カンファレンスは、まさにそうした潮流の実践知の共有と探索が行われるグローバルプラットフォームだ。具体例を交えながら、個人や組織が企業イノベーションを加速させていくためにどのような視点転換が求められるのかを考えていきたい。

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この記事の著者

小林 泰紘(株式会社biotope)(コバヤシ ヤスヒロ)

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