ソニー斉藤氏が語る新規事業の秘訣は「共に育てるコンセプト」と「アメーバ型チーム」

ゲスト:ソニー株式会社 TS事業準備室 室長 斉藤博氏

 ソニーは2014年1月、世界最大の家電見本市「International CES」にて新コンセプト「Life Space UX」を発表した。米国で2014年9月から販売開始した(日本では2015年1月)「4K超短焦点プロジェクター」を皮切りに、新しいタイプの製品を発売している。この製品シリーズの企画、開発、販売を手がけるのは、同社のTS事業準備室。室長の斉藤博氏に株式会社biotopeの小林泰紘氏が、製品化にこぎつけるまでの経緯や、直面した課題、自身やチームのビジョンについてインタビューした。

[公開日]

[語り手] 斉藤 博 [聞] 小林 泰紘(株式会社biotope) [取材・構成] やつづかえり [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 コンセプト 商品企画 イントラプレナー 社内起業家 Life Space UX チームビルディング アメーバ型チーム

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始まりは「ソニーはもっと新しいことができるのではないか」という思い

小林(株式会社biotope Creative Catalyst / Intrapreneurship Enabler):
 新規事業である「Life Space UX」を手掛けるTS事業準備室に所属する前は、どのような部署でどんな業務を担当されていましたか?

斉藤(ソニー株式会社 TS事業準備室 室長):
 ソニーに入ったのが94年で、途中シンガポールで3年ほど営業の仕事をしたのを除くと、ずっと“商品企画畑”を歩いてきました。製品カテゴリーとしては「カメラ」が一番長く、その後「PlayStation®」を担当した後に、今の部署に配属となりました。

小林:
 どのような経緯でTS事業準備室に参加されたのでしょうか?

斉藤:
 当時、今後もソニーが成長を続けていくためには、遊び心があるプロダクトやサービスをもっと積極的に出していこうという動きがあったんですね。既存のビジネスから離れて「全く新しいプロダクト」にチャレンジできる組織として、社長の平井直轄で作られたのがTS事業準備室です。

小林:
 新組織であるTS事業推進室に呼ばれたときは、斉藤さん個人としてはどのようなことを感じていましたか?

斉藤:
 ちょうどPlayStation®4の立ち上げの年だったので最初は迷ったのですが、すぐに火が付きました。私自身が会社に対して“憤りも多少含んだ熱い感情”を持っていたので、「よっしゃ、やったるか!」とアドレナリンが出ちゃった感じでしたね。

小林:
 どんなことに憤りを感じ、熱い思いをお持ちだったのでしょうか。

斉藤:
 それなりにキャリアも積んでいて、社内にネットワークがあったので、様々な年代やポジションの人から「こんな新しいことやりたいんだよね」といったアイデアや思いを聞く機会が多くあったんです。そういう“マグマみたいなものが沸々としている状態”だったんですけど、当時は、会社としては挑戦する姿勢が弱まっていて、辞めて他の会社に行ってしまう人もいました。

 自身の心の中でも「会社への思い」と「危機感」が交錯するような心理状態で、社長の近くで働いている社内の知り合いのところへ、怒鳴り込んだことはありました。

 「今は言えないけれど考えていることがあるから少し待ってくれ」と言われ、“かわされた”ような感覚も残りながら、変化し始める兆候に期待しつつ「じゃあちょっと様子を見ようか」と、冷静になるよう自分に言い聞かせました。

斉藤 博斉藤 博 氏(ソニー株式会社 TS事業準備室 室長)
ソニー入社後、商品企画業務や海外でのマーケティング活動に従事。カメラ事業やゲーム事業等で多岐に渡る商品の企画を統括した。特に、ミラーレス一眼NEXシリーズやPlayStation® 4など、新規性の高い商品の立ち上げを多く担当。現在は社内起業家(イントラプレナー)として社長直下のプロジェクトチーム、TS事業準備室で室長を務める。

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