SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

オープンイノベーションとCVCの実践者

“組織化”と“御用聞き”による、ブラザー工業のオープンイノベーション──ポートフォリオ変革が組織文化

【前編】ブラザー工業株式会社 新規事業推進部長 安井邦博氏

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

 1908年創業で現在115年の歴史を誇る電機メーカーのブラザー工業。ミシン事業を祖業に、プリンタや工作機械、通信カラオケの「JOYSOUND」など、数々の新規事業を手がけ、事業ポートフォリオを変革しながら長い歴史を歩んできた。同社のDNAには「新規事業」が深く刻まれています。2021年には新たなグループビジョン「At your side 2030」を策定。新たな時代に向け、次の柱となる事業の創出に精力的に取り組んでいる。時代ごとに新規事業を生み出すブラザー工業の原動力は何なのか。そこには、どのような仕組みが働き、どのような組織文化が根づいているのか。新規事業開発を担う新規事業推進部長の安井邦博氏に聞いた。聞き手は、『企業進化を加速する「ポリネーター」の行動原則 スタートアップ×伝統企業』共著者である中垣徹二郎氏。

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

半世紀前にオープンイノベーションを実践。新規事業を次々と生み出す組織文化とは

中垣徹二郎氏(以下、敬称略):安井さんとは、私が新卒で入社したVC時代からのお付き合いなのですが、長らくブラザー工業で新規事業開発を手がけられています。まずは、安井さんのご経歴をお聞かせいただけますか。

安井邦博氏 (以下、敬称略):私は1995年に新卒で当社に入社しました。ちょうど入社2年目に、プライベートでシリコンバレーを訪れたことがきっかけとなり、その後しばらくしてから当社の契約先だったシリコンバレーの戦略コンサルのオフィスで、長期出張ベースでリサーチャーとして働くことになりました。シリコンバレーでの勤務は2年間ほどでしたが、その時期にVCとスタートアップのダイナミズムを体感し、将来、新規事業を立ち上げていくうえで、そのメカニズムを自社に取り込む必要性を強く感じました。

 そのような想いを持って帰国し、2003年頃から複数の国内VCと接触を開始。そのなかで、中垣さんが以前勤めていたVCと出会いました。2006年に日本・アメリカ・中国向けのスタートアップ投資ファンド(コーポレート・ベンチャーキャピタル)を共同設立し、十数億円規模のファンドを立ち上げ、今まで17年間、オープンイノベーションの責任者を務めています。並行して新規事業の部門でプロジェクトリーダーとして新製品の上市を進めてきましたが、2016年から部門長として新規事業の立ち上げを推進しています。

中垣:2006年のファンド設立のことはよく覚えています。当時は、まだオープンイノベーションという言葉がほとんど知られておらず、日本の大企業とVCやスタートアップが交わるのも稀な時期でした。そうしたなかで、安井さんらブラザー工業の皆さんは、非常に謙虚かつ前向きに私たちの話を聞いてくれました。私は直接の担当ではありませんでしたが、月並みですが「すごくいい会社なのだろうな」と思ったのを覚えています。

安井:実は、当社はオープンイノベーションの先駆け的な会社だといえると思います。

 そもそも当社は1908年にミシンの修理業からスタートし、その後、家庭用・工業用のミシンメーカーになりました。創業から50年間ほどはミシン専業の時代が続きましたが、1950年代中頃に事業を多角化。ミシンのモーターを応用し、家電製品の製造に進出したほか、1971年にはアメリカのセントロニクス社というスタートアップと高速ドットプリンタを共同開発。現在に至るプリンティング事業の礎を築きました。

ブラザー工業の「3つの変革」
ブラザー工業の「3つの変革」/クリックすると拡大します

 その後も、電気通信事業会社と連携して通信ネットワークを構築した上で、1986年にソフト自販機TAKERUの販売を開始し、そのネットワーク技術やビジネスモデルを応用して、1992年には通信カラオケの「JOYSOUND」の製造・販売を開始しています。これもオープンイノベーションによる成果と捉えています。こうして振り返ってみても、1970年代以降、当社は外部の技術を取り入れながら新規事業を立ち上げており、オープンイノベーションが古くから根づいている会社であるといえると思います。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
50年で事業ポートフォリオは一変。「変わり続ける」を実践してきた歴史

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
オープンイノベーションとCVCの実践者連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング