大日本印刷（以下、DNP）とBIPROGYは、新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の「量子・AIハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」における「量子・AIアプリケーション開発・実証」委託事業の公募に対し、「量子＋古典AIによる物流業務効率化のアプリケーション開発」を共同提案し、実施予定先として採択された。同事業の実施期間は最大で、委託期間が2023年12月～2026年8月、助成期間が2026年9月～2027年8月だという。

　両社は、今回採択された研究開発テーマで、量子インスパイアード技術を含む量子アニーリングと、古典AI技術を組み合わせた「量子・AIハイブリッド技術」を活用した最適化アプリケーションを開発。物流・交通分野における配送計画の最適化や、倉庫内のピッキング計画最適化などの課題に適用するという。開発するアプリケーションは、DNPグループ内の製造・物流現場やBIPROGYの顧客企業にて導入実証を行い、本格的なサービスの導入につなげていく予定。また、同アプリケーションの普及や導入支援につながる様々な取り組みを推進していくとしている。

　共同研究テーマの概要は以下のとおり。

配送計画最適化アプリケーションの開発

　物流業界や配送業者に向けて、効率的な配送計画を決定するアプリケーションを開発。配送計画は、様々な制約条件に加え、道路状況や運転手・荷物の事情などで緊急に変更する可能性が高いため、高速な処理が求められる。同アプリケーションによって、輸送距離とCO2排出量の削減と同時に、物流業界の課題となっている輸送能力不足の解消にも貢献していくという。

ピッキング計画最適化アプリケーションの開発

　自律走行するロボットと作業者が協働する倉庫に向けて、効率的なピッキング計画を策定し、ロボットの走行時間が最小になる移動経路を計算するアプリケーションを開発。「DNPアニーリング・ソフトウェア」の適用も検討しながら、倉庫で働く人の動きや作業の進捗、障害物の状況を常に把握し、リアルタイムな高速処理を行うという課題の解決につなげていく。製造・物流現場への産業用ロボットの導入を促進し、作業効率の向上や生産年齢人口の減少といった社会問題の解決に貢献するとしている。

メタ解法を活用した汎用モジュールの開発

　従来の量子アニーリングを用いた組合せ最適化問題の求解では、制約条件が多くなると計算速度と解析精度が落ちるため、ビジネスへの適用が困難になるという課題があるとのこと。同研究開発では量子アニーリングを適用する前処理のために採用する古典AI技術の「メタ解法」を利用可能な汎用的なモジュールを開発し、最適解となりうる候補の集合である解空間の範囲を絞り込むことで計算速度と解精度の向上を目指すという。

　同モジュールは、両社が開発する最適化アプリケーションに適用するだけでなく、他のプログラムからも呼び出して、汎用的に利用できるように構成。量子技術者に幅広く長期間利用してもらうことを目的に、オープンソースとして公開する予定だとしている。

　DNPとBIPROGYは、今回の採択事業を通じて、量子・AIハイブリッド技術の研究開発を加速。開発したアプリケーションの普及に向けた支援サービスも拡充し、両社の顧客企業・団体などに提供して、量子技術の社会実装に貢献していくという。