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慶應 岩尾准教授が提唱する、ポスト資本主義社会での経営──価値創造の思考道具となるフレームワークとは

アジャイル経営カンファレンス 2024 レポート

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 未だに「失われた30年」から抜け出し切れていない日本を、根本的に変えるためにはどうすればいいのか。『世界は経営でできている』や『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』などを著した岩尾俊兵氏(慶應義塾大学商学部 准教授)が、2024年1月26日に開催された「アジャイル経営カンファレンス 2024」に登壇した。日本の諸問題の背景には「ヒト」への軽視が存在すると指摘する岩尾氏。この問題を解決するためには、全ての人が能動的に価値を創造する、「価値創造の民主化」が必要だと主張する。本稿では、その講演内容の一部を紹介する。

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人生は全て「経営」だ

 人生における全ての局面には、相手と自分の幸せを同時に実現する“問題解決”という意味での、「経営の現場」としての側面がある。家庭でも、職場でも例外なく……。そう主張するのは、慶應義塾大学の岩尾俊兵氏。ここでの「経営の現場」とは、「目の前の課題をどう解決し、価値(相手と自分を同時に幸せにする状態)を創造するか」を考えることだという。

 つまり、「全ての人が人生のあらゆる局面で、価値を創造する形での問題解決が可能」というのが同氏の主張だ。全ての人が常に価値創造をしていれば、目の前の苦しさを解決できる可能性がある上に、イノベーションのアイデアが生まれる可能性も必然的に大きくなる。また、良いアイデアが生まれた際、それを具現化することもより容易になるはずだ。

 岩尾氏によれば、アジャイル経営も、アメーバ経営も、そしてトヨタ生産方式も、「価値創造の民主化を目指す」考え方という点で一致している。個々人が常に経営の現場に出くわしているように、小さなチームや個人であっても経営の現場を持っているという。そして、それぞれの現場で価値を創造できる。これをただの綺麗事ではなく現実とするためには、経営技術と経営意識を誰もが持たなければならないと同氏は力強く主張する。

日本の諸課題の背景にある「ヒトよりもカネ」の思考

 現在、日本は数多くの問題を抱えていると指摘する岩尾氏。たとえば、経営の「後継者不足」。後継者がいないために、40代から70代まで長期にわたって経営を続ける経営者は多い。それゆえ、経営層の報酬が年々上がり続けているという。

 一方の従業員はといえば、賃金は上がらないまま労働時間ばかりが増え続けており、困窮を極めていると岩尾氏は述べる。同氏は、インターネット上で「金を持っている高齢者」に対する攻撃を煽るようなコンテンツが増加傾向にあったり、企業の経営不正や製品の品質上の問題が頻発したりする裏にも、こうした要因が絡んでいるのではないかと考えている。

 岩尾氏は、これらの背景には「ヒトを蔑ろにし、カネを優先する」という発想があると説明する。つまり、後継者を育てられていないのも、労働環境が悪化しているのも、高齢者に攻撃的になったり、取引先や顧客に対し不正を働いたりするのも、全て「ヒト」よりも「カネ」を優先してきたからだというのだ。

 この考えをさらに分解すると、「カネのほうがヒトよりも相対的な優位性が高い」、そして「価値は有限だ」という発想が見えてくる。これでは、「ヒトを傷つけてでもカネを奪ったほうが良い」「カネは奪い合うものである」ということになってしまう。

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

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