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AGCの両利きの経営を支える「左利き」と「右利き」という研究開発の循環、事業と技術をつなぐ存在とは?

【第2回】AGC株式会社 執行役員 技術本部 企画部長 海田由里子氏

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 本連載は、さまざまな企業のR&D組織のキーマンへのインタビューを通じて、次世代におけるR&D組織の可能性やあるべき姿を探求する。本記事では、AGC株式会社の執行役員 技術本部 企画部長の海田由里子氏に話を伺った。日本を代表するガラスメーカーとして長い歴史を持つAGC。近年では電子、ケミカル、ライフサイエンスなど多角的な事業を展開する企業として知られる。数々の市場開拓を可能にしてきた、「両利きの経営」における研究開発の戦略や体制を聞いた。

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AGCの新市場開拓・多角化を支える「両利きの開発」

──AGCはガラス事業を起点に、電子、ケミカル、ライフサイエンスなど、幅広い領域で事業を展開しています。本日は、AGCにおける研究開発の特徴や強みについてお伺いします。

 AGCの祖業は1907年に開始した建築用ガラス事業です。その後、第一次世界大戦で輸入が困難になったガラスの原料であるソーダ灰、窯のレンガの内製化を目的として化学事業、セラミクス事業が始まりました。それ以来、自動車用ガラス、ブラウン管用ガラスと、時代のニーズにガラス技術を適用しながら、事業の幅を広げてきました。また、有機材料や樹脂との複合化により、ガラス製品の価値向上にも取り組んできました。近年では生産技術力を基盤にバイオ事業にも進出しています。自社の組織能力や技術を起点に、幅広いプラットフォームと融合することで、新規事業を創り上げるのがAGCの強みといえます。

──AGCといえば「両利きの経営」が有名です。また、研究開発では「両利きの開発」が知られています。

 両利きの開発は、既存顧客のニーズに伴走し、オープンイノベーションなども活用して既存の技術や商品を次世代向けに革新する「右利きの開発」(下図②)と、保有技術を再定義して新市場を開拓する「左利きの開発」(下図③)を並行して行う開発戦略です。

両利きの開発
資料提供:AGC株式会社/クリックすると拡大します

 両利きの経営の提唱者であるオライリー教授が考案した「イノベーション・ストリーム」のフレームワークをもとにコンセプト化しました。

イノベーション・ストリーム
図版出典:加藤雅則、チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ『両利きの組織をつくる 大企業病を打破するための「攻めと守りの経営」』(2020年、英治出版、P67図3.4「イノベーション・ストリーム」)を参照し作図/クリックすると拡大します

 このコンセプトを打ち出したのは比較的最近ですが、AGCの歴史を振り返ると、まさに「右利きの開発」と「左利きの開発」の繰り返しです。ある意味では、AGCは長年にわたって、両利きの開発に取り組み続けてきたといえます。

 そして、両利きの開発において、重要な役割の一つとなるのが私の所属する技術本部です。技術本部は企画部、先端基盤研究所、材料融合研究所、生産技術部、フロート技術推進部で構成されていますが、各部署の組織名からわかるとおり、素材・材料の開発、プロセス技術開発、生産技術開発と、商品化までのプロセスが包括されているのが特徴です。2021年にオープンしたYTC(横浜テクニカルセンター)にはこれら3つを担う部署が集結しています。技術本部内で商品化までのプロセスをシームレスにつなげることで、新たな技術開発や技術適応を加速し、両利きの開発を支えています。

AGCの開発体制
資料提供:AGC株式会社/クリックすると拡大します

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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