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失われた30年と化学産業のR&Dの課題──三井化学が立ち上げた「未来を描くR&D組織」の狙いとは?

【第1回】ゲスト:三井化学株式会社 研究開発本部 未来技術創生センター長 上原与志一氏

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 本連載は、さまざまな企業のR&D組織のキーマンへのインタビューを通じて、次世代におけるR&D組織の可能性やあるべき姿を探求する。今回、取材を行ったのは三井化学。同社は2022年に研究開発本部内に新組織「未来技術創生センター」を設立した。2050年を見据えた未来起点の研究開発を推進しているという。未来技術創生センターを設立した狙いは「未来を描くR&D組織」。では、どのような人材が、どのような活動に取り組んでいるのか。同センターのセンター長を務める上原与志一氏に聞いた。

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R&D組織は事業部に紐づけるべきか、独立させるべきか

──まず上原さんの経歴をお伺いします。

 キャリアとしてはR&D組織が中心ですが、他の部門も経験しています。三井化学への入社は1992年です。最初に、研究開発本部の一部門である生産技術研究所に配属され、化学プラントの立ち上げや合理化、プロセス開発などに従事。その後、バイオマスからのものづくり技術や省エネ技術の開発などに携わり、2014年からは経営企画部で新事業・新製品創出戦略や、現在の長期経営計画の土台となった「VISION 2025」の策定(2016年11月発表)に関わりました。2017年には海外におけるR&D拠点である「三井化学シンガポールR&Dセンター」の社長に就任。海外企業やアカデミアとのオープンイノベーションなどを手がけたのち、2022年に現職である未来技術創生センターのセンター長に就任しました。

 R&D組織を中心にキャリアを歩みつつも、経営企画や海外駐在を経験しているのがやや特徴的な点かもしれません。また、R&D組織のなかでも、企画寄りの仕事が多かったようにも思います。

──三井化学のR&D組織の体制や位置付けについてもお聞かせいただけますか。

 大きな枠組みとしては、事業本部とは独立した形で研究開発本部を設置しており、そのなかに技術領域ごとやソリューションごとの部門が設けられています。かつては、各事業本部内にR&D組織を設置している時代もありましたが、新規事業の創出や部門横断的な技術活用などを目指すなかで、現在の形に至りました。社会環境や技術トレンドは今も急速に変化していますし、組織体制については今後も変化する可能性があります。

三井化学のR&D組織の体制や位置付け
資料提供:三井化学株式会社/クリックすると拡大します

──R&D組織が本部内に設けられる場合と独立して設置される場合では、何か違いがあるのでしょうか。

 一般的にいえば、両者ともにメリットとデメリットがあると思います。例えば、R&D組織を独立して設けた場合、技術は深化しやすい傾向にありますが、その反面、顧客視点のない「売れない技術」も生まれがちです。一方で、事業本部内に設置した場合は、技術に顧客視点が備わりやすいですが、短期的な視点に捉われてしまうことがあります。現在の顧客を意識するあまり、研究開発が近視眼的になってしまうわけですね。

 というわけで、これについては、どちらが正しいとは一概には言えないと思います。当社においても、「高分子・複合材料研究所」のように特定の技術領域で各事業本部を支援する部門がある一方で、「モビリティデベロップメントセンター」のようにソリューションを限定した部門も設けるなど、組織体制にはいろいろと工夫を凝らしています。特に、ここ数年ほどは社会課題や顧客起点に焦点を当て、組織を強化してきました。その流れのなかで設置されたのが、私がセンター長を務めている未来技術創生センターですね。

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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