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クレイトン・クリステンセンが来日。破壊的イノベーションを語った白熱の90分。

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『イノベーションのジレンマ』などの著作で知られるイノベーション理論の大家、クレイトン・クリステンセン氏が来日し、11月13日、「C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2015」で講演をおこなった。主催はNUA(NEC C&Cシステムユーザー会)、NECと一般社団法人Japan Innovation Network (JIN)による共同企画。東京国際フォーラムの会場に登壇したクリステンセン氏は、日本企業がかつて果たしたイノベーション、破壊的イノベーションの理論、成長を創出するための考え方について、90分間にわたり熱く語った。セミナーの詳細とその後におこなわれた有識者とのパネルディスカッションの内容の詳細は後日紹介するが、まずは当日の概要をフォトストーリーで紹介する。

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クリステンセンハーバード・ビジネス・スクール教授 クレイトン・クリステンセン氏

講演タイトルは「破壊的イノベーション 〜新たな成長事業をどのように生み出すのか〜 Disruptive Innovation: How to Create New Growth Businesses」。はじめに、クリステンセンは「破壊的イノベーション」について説明。「破壊的」と「ブレークスルー的」とは異なること、日本企業はかつて、幾多の破壊的イノベーションをおこない産業として国として発展してきたことを説明する。

70年代から80年代にかけてミニコンピュータでコンピュータ市場を席巻したDEC(ディジタル・イクイップメント)社が、なぜ凋落したか、トヨタはなぜ北米の自動車市場で成長したのかなどを通じて、「破壊的イノベーション」の理論をもちいて解説した。

企業はより良い性能の製品を追求する。そうした製品は、ある時から顧客の求める性能の水準を上回る。ミニコンに対してのPC、トヨタの小型車、ホンダのカブ、ソニーのトランジスタラジオなど、これらはより“アクセシブルでアフォーダブル”な製品として登場し、市場を奪った。日本の60年代から80年代までの企業の成功は、こうした破壊的イノベーションによるものだ。

ここでクリステンセンは、縦軸に製品の性能、横軸に時間を表わした座標と、企業の製品改良の成長線が、顧客が求める要求水準を超えてしまうという「イノベーションのジレンマ」の図を示した。(イノベーションのジレンマの図はこちらの記事を参照)

イノベーションの3つのタイプ

続いて、イノベーションには3つの類型があることを紹介。「破壊的イノベーション」「持続的イノベーション」「効率化のためのイノベーション」である。 「破壊的イノベーション」は新たな市場を形成する。「持続的イノベーション」は、競争力を生み出す。しかし、新しく革新的な製品が登場すれば、それまでの「より良い製品」は必要とされなくなる。「効率化のためのイノベーション」は企業のキャッシュ・フローに貢献するが雇用を減少させてしまう。

アメリカは戦後、9回の景気後退(リセッション)があった。それぞれのジョブ・ラグ(景気が底を打ってから回復するまでの期間)が長くなっている。戦後のはじめの6回までの期間は6ヶ月、91年から92年のリセッションでは15ヶ月、2001年から2002年の不況では39ヶ月、2007年から2008年では70ヶ月と長くなっている。何かが根本的にまちがっているのだ。

そして、クリステンセンはこうした雇用の停滞の原因は、企業が「効率化のイノベーション」を追求してきたことにあると語る。かつて輝かしい成長を遂げた日本企業も、この25年間は効率化のイノベーションが中心で、破壊的イノベーションといえるものは、任天堂のWiiだけだったと語る。

その上で効率化のイノベーションが多くなった背景には、米国のアナリストたちのファイナンスの理論があるとクリステンセンは指摘する。RONA(Return of net asset= 純資産利益率)やIRR(Internel rate of return =内部労働効率)リターンといったレシオ(比率)の考え方だ。分子は常に利益で、分母は様々。こうした比率を向上させるには、分子(利益)をあげるか、分母を下げるかしかない。利益を上げるより、分母にくる数字を下げる方が簡単である。破壊的イノベーションが収益に貢献するのは、5年から10年かかる。このため企業は、より迅速かつ効率的に投資を回収する方向にむかうとクリステンセンは語る。そして現在では金融業が発展し、資本のコストは限りなくゼロに近づき「資本があふれている状態」だとも言う。

成長のための思考 “Jobs to be done”

最後にクリステンセンは、企業に成長を持たらすための思考ツールとも言える“Jobs to be done”という考えかたを紹介する。これまで多くの企業が、顧客に製品を売るために、「顧客を知る」ことを一義としてきた。しかし本当に大切なことは、顧客を知ることではなく、「顧客がおこなうべき用事(Jobs)を知ること」なのだと語る。

私は現在63歳で、身長は2メートル3センチ。娘はハーバードではなくニューヨークのコロンビア大学に入学した。こうした私の属性を知っても、私が「何かを買う」こととは関係がない。顧客の属性というのは、ものを買うことの理由にはならない。必要なことは顧客がやろうとしている用事(Jobs)を知ることだ。

こうした考え方に立てば、イノベーションは決して不確実で予測不可能なのもではない、とクリステンセンはいう。顧客が何をしようとしているかを理解すれば顧客にものを買ってもらうことができる。そこから購入につなげるためのモデルを示した。

最後に、Japan Innovation Network専務理事 西口尚宏氏との対話が行われた。「クリステンセン氏の理論が多くの経営者に受け入れられ、浸透しているのになかなか実行されないのは何故か、多くの経営がイノベーションの理論をわかっていながら失敗に陥るのは何故か」という質問に対し、「財務がイノベーションを阻害している」とクリステンセンは言う。「持続的イノベーション、効率化のイノベーションが競争力になる。この2つのイノベーションは毎日起きている。しかし、本当の成長に結びつくのは破壊型イノベーションだ」と語り講演を終えた。90分間の白熱トークに多くの参加者が魅了された。

(本セミナーの詳細と、その後の日本企業の経営者、有識者とのパネルディスカッションの内容は後日あらためてレポートする)

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