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山崎徳之の「テクノロジービジネスの幻想とリアル」

バズワードは捨てたもんじゃない、事業計画にもマーケティングにも活用しよう

【新連載 ゼロスタート山崎社長のコラム Vol.2】

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ベンチャー企業ゼロスタート山崎徳之が、自らのスタートアップとベンチャーの経験から、ビジネスとテクノロジーについて語る連載の第二回。今回はバズワードをどう活用するのかもしくは利用するのかについて見てみます。まずいくつか代表的な例をパターン分けしてみます。

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バズワードからピボットする

 わかりやすい順でいくと最初は事業展開に活用するケースです。
バズワードになるということはそれだけ市場規模への期待値も高いので、事業の拡大もしくはピボットの選択肢としてそれを選ぶというのはそれなりに妥当性はあります。
ただバズワードは同時に注目している人が多いということでもあるので、過当競争すなわちレッドオーシャンになりやすいという欠点というかジレンマも含んでいます。
たとえば私の身近な例でいうと、レコメンドというのは10年ほど前、結構注目を浴びましたが実はそれほど市場が広がりませんでした。
 筆者の会社も含めてたくさんの会社が参入しましたが、そのままレコメンドをメインのビジネスとし続けた企業はほとんどありませんでした。 ちなみに筆者の会社は検索をメインに据えてレコメンドは検索の補完という位置づけで事業展開しました。 多かったケースはCRMやDMPにピボットしていったパターンだと思います。 とりあえずこのケースをAとしておきます。

事業計画にすべりこませる

 次に、事業展開ではなく事業計画で活用もしくは利用するケースがあります。
 事業展開と事業計画は似ているようで全然別物です。
 事業計画のうちの一部が事業展開となるためで、言ってみれば選挙の候補者と当選者のようなものです。 選挙の公約にあたるのが事業計画、それに対する支持が得られて当選したのちに行う政策が事業展開です。 他の例を挙げれば、エベレストに行く、というののと、エベレストに行くからお金を出してください出してもらえれたら行きます、という違いと同様です。
企業の場合、事業計画を立ててそれが妥当だと思えれば事業展開に進めるケースと、事業計画を立ててそれが「外部に妥当だと思われなければ」事業展開に進めないケースがあります。 外部というのはいろいろなパターンがあります。 たとえば通信免許が降りる・降りないなどは健全というか事業展開のために事業計画を立てるパターンであるといえます。
ただ外部の思惑が絡んでくるのはほとんどにおいてその目的はお金です。

 企業にとってお金を得る形態というのは3つしかありません。

「借金、出資、収益」です。

 収益は事業計画だけでは得られないのでこのケースにおいては借金か増資ということになります。 一般にイメージしやすいのは「こういう製品を作りたい、そのための機械を購入したいのでお金を貸して欲しい」などではないでしょうか。

 借金の場合はその後に返済がすぐに来るので(創業支援などで返済猶予がある借り入れもありますが)、実際にその事業計画にそれなりの見込みがないと行き詰まってしまいます。 つまり借金が目的で事業計画を立てる場合には、だいたい明確に前提となっている事業展開があり、しかもそれは遠い将来ではないというパターンがほとんどです。 LBO(レバレッジド・バイアウト)などもわかりやすいかもしれません。
  LBOとは買収先の収益を返済原資としてお金を借りる方法です。 有名な例で言うとソフトバンクがボーダフォンを買収できたのもこのLBOという手法によるものです。 なんとその額1.2兆円でした。 このディールでソフトバンクは2000億円しか出していないので、その6倍をボーダフォンの事業において将来得られるであろう利益を原資として調達したということです。 LBOの場合も先行き不安な業種では外部すなわち銀行やファンドは首を縦に振らないでしょう。
 LBOのような大きな借金のためにはバズワードになるような、将来大きな成長が期待できる(気がする)業界である必要があります。 こういったケースをBとしておきます。

バズワードでマーケティングする

 3つ目がマーケティングやプロモーションに活用するようなケースです。 ただこれはAを伴うようなケースがほとんどです。新しい事業展開をしたならその事業についてプロモーションをするのはむしろ当然だといえます。ではわざわざ3つ目の例にしなくても良い気がしますが、そうでないケースもままあるのです。 例えば以前からホットケーキが名物メニューにあるレストランがあったとします。 それがパンケーキブームに乗って「名物のパンケーキ!」というプロモーションをかけたとしたら、これは特に商品開発などのリスクも伴っていないため、バズワードをプロモーションにだけ利用というか活用しているケースであるといえます。

 最近でいうと人工知能がまさにこうした事例でした。 Aでも出しましたがレコメンドを提供している企業が人工知能ブームに乗って「人工知能に取り組んでいる企業です」というパターンはこれであるといえます。 以前から人工知能という概念の中に機械学習は入っていたといえますが、機械学習はさほどバズワードにはならなかったので「機械学習に取り組んでいます」とはさほどアピールしなかったのが、人工知能というビッグなバズワードが登場したことによってそれによるプロモーションを大々的に行うというのはまさにこの3つ目のケースであるといえます。 古いところで言えばDWH(Dataware House)、最近でいうとビッグデータ、DMP(データ管理プラットフォーム)、そして人工知能などの、IT業界やデジタルマーケティングにおいてはブームになるテクノロジーは、実は「昔からあったものと変わらない」ことが多いのです。 新規に事業展開するのであればさておき、同じことをやっていてそのプロモーションのキーワードがころころ変わるのはまさにバズワードによるところが大きいといえます。

 さてとりあえずこの3つについて考えてみるときに、単にこの3つの分類だけで企業がバズワードを活用もしくは利用する理由というのは見えてきません。
そこには企業の規模やステージというものが関係してきます。 細かく分類するとキリがないので、スタートアップ(創業前含む)、非公開企業、上場企業(上場直前含む)という3つに分けて考えることにします。 これもわかりやすく、スタートアップをX、非公開企業をY、上場企業をZとします。 このA、B、CとX、Y、Zの組み合わせによって、企業はどういう思惑でバズワードを活用・利用するのかが見えてきます。

 次回は具体的なその内容について解説します。

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この記事の著者

山崎 徳之(ヤマザキ ノリユキ)

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