SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

ニッポンの経営企画・事業企画

創薬のエコシステム作りに奔走した佐野さんが南場さんに出会い、DeNAで描くこと

第10回:株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA) ヘルスケア事業部 ビジネスデベロップメントディレクター 佐野毅氏

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

 佐野毅氏は製薬業界におけるオープン・イノベーション、エコシステムづくりに奔走した人物で、製薬大手で長年のキャリアを積み、昨年DeNAに転職した。これまでの経歴や、IT業界に転身して始まったばかりのデジタルヘルスケアに取り組むという選択の背景について、INDEE Japanの津嶋辰郎氏がインタビューした。DeNAの理念への共感、南場氏との出会い、デジタルヘルスケアにどんな想いを抱いているのか。

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

創薬のエコシステムを作るべくオープン・イノベーションのしくみを立ち上げた

津嶋(株式会社インディージャパン 代表取締役/マネージングディレクター):
 佐野さんは新卒で第一製薬(現 第一三共株式会社)に入り、昨年DeNAに移られましたね。第一三共では、どのようなことをされてきたのでしょうか?

佐野(DeNA ヘルスケア事業部 ビジネスデベロップメントディレクター):
 製薬企業はバリューチェーンがすごく長いだけでなく、厳しい法令に対応していく必要があるんですよ。ひとつの薬が出るまでには、種になるアイデアから新規物質を見出す基礎研究(2~3年)、動物・培養細胞を用いて安全性・有効性を確認する非臨床試験(3~5年)、ヒトでの安全性・有効性を確認する臨床試験(6~7年)、各国の薬事当局の承認・審査(1~2年)、その後、薬剤が市場から無くなるまで数十年続く、安全性と有効性を監視するための市販後調査(ファーマコ・ビジランス)があります。その過程を、購買・生産・品質管理・物流も支えています。僕も25年くらいの間にいろいろな部署を経験しました。

 第一三共でやっていたのは、「TaNeDS(タネデス:Take A New Challenge For Drug Discovery)」というオープン・イノベーションの取り組みです。創薬や技術研究に共同で取り組む研究者を国内から広く募集するというもので、「タネ」はシーズ(種)、「デス(DS)」は「Daiichi Sankyo」の頭文字にかけています。

TaNeDSTaNeDS(タネデス:Take A New Challenge For Drug Discovery)
図版:http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/rd/taneds/concept/index.html より

 その後、大学発のベンチャーを育てる「OiDE(オイデ:Open Innovation for the Development of Emerging technologies)」というプロジェクトも三菱UFJキャピタルと立ち上げました。米国と異なるエコシステムをもつ日本の実状に合わせた世界初のスキームをもつファンドです。OiDEは(手招きしながら)「おいでおいで」という意味です。日本発の薬を作るのにプロジェクト名が英語というのが嫌で、私はいつも日本語になる名称を考えるんですよ(笑)。

OiDEOiDE(オイデ:Open Innovation for the Development of Emerging technologies)
図版:http://www.daiichisankyo.co.jp/corporate/rd/oide/index.htmlより より

津嶋:
 なるほど。どういった経緯でオープン・イノベーションの担当になられたのですか?

佐野:
 その前は、ライセンス部門にいました。新薬となる成功確率(基礎研究後から承認まで)は3%とも言われています。また費用も数百億円~数千億円を要するハイリスクな事業です。新薬を獲得する2つの方法がありまして、ひとつは自社の技術で創薬していく方法。もうひとつは他社や大学発の技術を取り込んで作る方法です。三共の初代社長 高峰譲吉氏は、米国でのタカジアスターゼ(消化酵素)とアドレナリンの特許を取り、当時のパークデービス社へライセンスし、莫大な実施許諾料を得ており、ワシントンのポトマック川にソメイヨシノを寄贈し、毎年5月のサクラ祭りにて日米の心を温めています。このように医薬品業界では明治時代から「社外の知財」を使わせていただくということが行われているんですね。

 僕のミッションは会社の外から効率よく「良いもの」を取ってくることで、製薬のビジネスで一番優れているアメリカ型の会社のやり方に注目しました。向こうでは大学の先生も含めたベンチャーをVCが支援し、育ってきたところで製薬会社が提携や買収をするということがよく行われていて、より積極的なところは製薬会社自体がCVC(Corporate Venture Capital)を設立し、投資してきました。世界最大の独立バイオテクノロジー企業Amgenに投資したのは、実はGSK(グラクソスミスクライン)でした。それで、まずは日本のライフサイエンス関連VC(Venture Capital)20社、翌年アメリカでCVCをやっている製薬会社15社にインタビューしまして、「うちもオープン・イノベーションをやるべきだ」というレポートを書いたんです。TaNeDSやOiDEの施策もそこに盛り込んでいました。ただ、そのレポートは一度お蔵入りになっちゃったんですけどね。

佐野毅佐野毅氏(DeNA ヘルスケア事業部 ビジネスデベロップメントディレクター)

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
日本のバイオベンチャーの“種をみつけ育てる”という目的の原動力は何か?

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
ニッポンの経営企画・事業企画連載記事一覧

もっと読む

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング